もふもふファミリー(単発)
変なやつらがパーティー組んで攻略してた。
あらすじ
「よう、お前ら。朝から俺んとこで入り浸りやがって。クエストの一つや二つ受けていかねーのかよ」
「あー残念ながら俺は雨が降ってる日にクエストは受けないって決めてっから」
「同じくー」
「なら注文くらいしろ」
「んじゃジョッキ一つ」「俺もー」
「はいよ」
「ほい持ってきたぞ」
「あ、なーなーオヤジ。俺ら暇だからさ。なんか面白い話してくれよ」「オヤジも暇だろー?」
「お前ら…。はぁ、ったく。客が来るまで軽く話してやるよ」
『もふもふファミリア メンバー』
お嬢様系もふもふ《マリア》…ギルド創設者。もふもふをこよなく愛する。
【先導者】バフ係。火力は少ないが随伴者への恩恵は破格。
異変前:イギリスと日本のハーフで本物のお嬢様。ご学友に見せてもらったゲーム内の狐娘キャラを切っ掛けに慣れない電子機器を扱いゲームを始めた。
のじゃロリ系もふもふ《サイハテ》…最古参の一人。ギルドの良心。一番年配。
【拳刀士】火力係。中距離からの剣圧と近距離の格闘で戦う。
異変前:元は格闘家だったが今は引退し、その情熱を忘れることができずゲームで続かせることに。面倒見がよかったため右往左往するマリアとリンネを助けた。
クールメイド系もふもふ《リンネ》…最古参の一人。身の回りの世話が生き甲斐。
【穿槍屋】一番槍。無言で突っ込んで荒らしたら後退。
異変前:マリアのメイド。お嬢様を補佐するために一緒にプレイし始めた。ギルド内の女性では一番年上だが、性格であまりそう見られない。
あらあらうふふ系もふもふ《ウヅキ》…一児の母に見えるがまだ未成年。細目。シズクと二大ママン。
【癒術士】回復役。ゲームでは強かったが異変後は苦戦中。
異変前:大学のサークル仲間からの勧めで始めたが、早々に仲間が飽きて去っている中個人的に遊んでいたのをマリア一行に見つかる。
異変後:回復の仕組みを理解してないせいで始めは役立たずだった。
しっかり妹系もふもふ《シズク》…姉に唆されて始めた。今は皆のお母さん。
【幼主婦】家事係。ギルドのコンディション調整を担っている。
異変前:ゲーマーの姉が一緒にプレイしたいために渋々始めたが、元々料理好きだったためゲーム内で色々料理が出来るのを知ってのめり込む。
知的お姉さん系もふもふ《マオ》…シズクの姉。マリアと波長の合うもふもふ愛好者。
【魔導士】後衛職。戦闘はあまり出ず、主に交渉の場で活躍する。家計は苦手。
異変前:ゲーマーとして新作に手を出すのはあたりまえ。しかしサービス終了まで飽きなかったのはマリアたちのおかげかもしれない。
異変後:
オジ様系もふもふ《レオン》…ダンディーで皆の相談役。縁の下の力持ち。
【鍛治師】生産職。種族補正で物理より魔力が高い武器が多い。
異変前:
異変後:魔法という概念に苦悩しいつもの武器を作れなくなった。
素直デレ系もふもふ《アスカ》…正義感溢れる猪突猛進ガール。実力は折り紙つき。
【超勇者】超火力。大剣で殴る、飛ばす、切る。恐れを知らない愚者。
女装ショタ系もふもふ《ハルカ》…初対面の相手を惑わして楽しむ小悪魔。
【傾国者】デバフ係。ゲームでは活躍したが異変後は不透明。くノ一(女装)。
芋娘系もふもふ《ノノン》…農業が好きだが人見知り。一番胸が大きい。
【酪農家】生産職。農業が主だが狩猟のために銃を持つ。
◆◆◆ 荒野 某所 ◆◆◆
「…来ましたわね」
岩陰に二つの光が明滅する。その光は双眼鏡のレンズが反射したもので、じっとあるところを見ていた。
「ふ、あぁ~、むにゃむにゃ…」
「あら、こちらもですわ」
双眼鏡を外し、女性は振り向く。視線の先には目を擦りながらフラフラとこちらに歩く子供がいた。
子供は一つあくびをすると少女に話しかける。
「ふぁあ…む、丁度か?」
「ええ。先ほど視認いたしましたわ。ご覧になります?」
少女はいた場所を子供へ譲り、双眼鏡を渡す。それを使い、遠方へと視線を向ける。
「うむ。…ほほう、これはこれは。ノノンだけで足りるか?」
「心配ですわね。後詰に誰か用意いたしませんと」
子供は少女に視線を会わせず会話をする。少女も気にせず答えた。
「なら儂が出よう」
「寝起きで、ですの?」
心配するそぶりを見せる少女。子供は双眼鏡を少女に渡し、奥に移動しはじめた。
「そもそも他に行ける者がおらんじゃろう」
「そうですわね。アスカはギルドの防衛、マオさんとハルカは町に出払ってますし…」
奥におかれている装備に手をかけ、身につける。
ひとつは籠手。熊のより大きく鋭い爪を有している籠手を難なく装着する。子供の見た目に不釣り合いなそれは、腕を下げたとき地面に触れるくらいの大きさだとわかる。
次に壁に立て掛けてあるモノを籠手越しに掴む。それは刀と呼ばれる刀剣で、全長2メートルの大業物。子供の大きさが130センチメートルも無いと思えばその異質さは想像できるだろう。
「それに儂が出るまで時間はかかろう。それまでに体調を整えておるわ」
「ええ、そうしてくださるかしら」
二つの装備を身に付けた子供はそこから出ていく。
そことは、およそ部屋とは言いがたい空間のことで、上のはみ出た岩盤を天井と呼ぶならば辛うじて部屋と呼べるだろう。
日陰から出た子供は早足で目的の場所へ向かう。
「では、始めましょう」
一人になった少女は手に持つ拳銃を空へ向け、引き金を引いた。
(パァーン…!)
渇いた空砲が荒野の空へと響き、ある人への合図を送る。
◆◆◆ 荒野 とある岩山の山頂 ◆◆◆
「あ…合図…おじいちゃん起きたんだ…じゃあ安心して撃てる…」
独り言を呟く先程とは違う少女。彼女の手には一つのライフルが握られていた。
「さすがにこの数を全部倒すのに不安だったから助かったぁ…」
嘆息する少女は岩山の谷間を疾走する者に目を向ける。
「…すごいなぁ、リンネさん。あの大群引き連れて一度も振り返らず走れるなんて…」
大群。一言で言えば簡単だが、その実追ってきているモノたちは小動物の群れではない。
「中型が500、大型が60、いや80くらい…かな? 小型は他の魔物に踏み潰されていないかも…」
少女の口から出た"魔物"。これは動物とは違う異形の存在で、魔力によって生まれ、魔力を求めてさ迷うモノ。
彼女たちはこれからこの魔物を狩るようだ。
「うん…じゃあ、始めようか…」
ふぅ、と軽く深呼吸をして、呟いた。
「【武装展開】…」
その言葉に答えるように、彼女の背後から複数のライフルが現れた。現れたライフルの数はおよそ140丁。
宙に浮かぶそれはとても不可思議だが、彼女にとっては慣れ親しんだ光景だった。
『武装展開開始』『第一、第二魔砲の起動確認』『第三、第四の起動…』『照準、誤差0.00001』『弾倉機構の稼働確認』『第三から第四十までの魔砲の連動可能領域まであと10秒』『第一魔砲の射撃準備完了』
どこからともなく声が矢継ぎ早に放たれる。重なる声は彼女の後ろのライフルから発せられ、ライフルたちは幾何学に宙で動いている。そしてまだまだライフルが空間から現れていた。
「たぶん、もっと魔力込めなきゃ…撃ち抜けないかも…。【追加充填】…」
『魔力供給開始』『第一魔砲の魔力充填200%突破』『次段弾倉充填開始』
彼女のからだが仄かに光ると、その光を吸うようにライフルへと移動した。ライフルが光を纏うと、次のライフルへ光が移動する。
「狩人は、敵に悟られず、一撃で仕留める…。いきます…!」
片目を瞑り、銃口を魔物へと向ける。それに連なるように空中に浮かぶライフルたちも銃口を動かした。
『第五十八から第百四十魔砲の連動が可能』『第一魔砲の魔力充填400%突破』『第百四十一から第二百魔砲の連動準備、開始』『続いて第二百一から第六百魔砲の展開、開始』
未だ声がやむことがないが、彼女は我関せず引き金を絞る。
「リンネさん、なら避けられる、よね…?」
(カチッ…)
引き金が引かれた瞬間。豪雨のような爆音が荒野に響いた。
◆◆◆ 荒野 とある平地 ◆◆◆
魔物に追われていたのは先の少女より大人の女性。
しかしその走り方はおおよそ普通に想像するよりはるかに離れている。
彼女の両足にインラインスケートのような靴を履いていて、その車輪で荒野を爆走していた。
ただ、爆走というのは比喩ではない。彼女の後ろがわの腰辺りに、二つの魔方陣が小さく展開されている。その魔方陣から炎が吹き荒れており、その勢いで走っているということになる。
つまり、彼女は自分の足で走っていないのだ。
(バシュウウウウウウウ!!!)
爆走している最中、後ろで何かが撃ち込まれた音がした。その音は幾重にも重なり一定の長さを持つ音へと変化した。
女性は振り返り、銃撃を受け、倒れていく魔物の数を数え始めた。
「敵 被弾頭数 50 70 130 200。流石 ノノン様」
「ん。あれは…」
「おーい、リンネー!」
「おはよう サイハテ様」
「おはよう。ノノンの撃ち漏らしはこの儂に任せるのじゃ」
「ん、了解。じゃあ 作戦区域から 離脱する」
「うむ。帰ってゆっくり休むのじゃ」
「さて…。あれだけ打ち込んだのにまだ残っておるのか。ノノンの射撃も流石じゃが、それを連れてきたリンネも流石じゃのう」
(キィィィィィン……)
「撃ちきったか。なら、これが儂の獲物ということになるの」
(ガアアアアアアア!!!)(ブオオオオオオオ!!)(キシャアアアアア!!)
「くふ。ノノンめ、自分で仕留めれない奴だけ残していきおったな」
「まあそれでもこの数なら…【妖刀・黄泉渡し】」
「ふむ、今日も魔力の"ノリ"が良い」
「…【居合・波動刃】!!」
(グガアアアア!!)
「む、当たりが悪かったか。なら追加じゃ」
(ギャアアアアア!!)(ギギュウウ!!)
「おっと、まだ奥におったか…ってこれは。デカいのう…」
「これは流石に一人は無理じゃろうて…。えぇ…儂一人でやるのか…?」
「その必要はありませんわ」
「マリア。お主が前に出るのか?」
「リンネが出撃できない以上、私が出るしかありませんわ。さあ、始めますわよ!【鼓舞・鬨の声】!!」
「うむ。ありがとなのじゃ」
「そちらの10体は任せましたわ!」
◆◆◆ 荒野 某山岳地帯 ギルドハウス ◆◆◆
「ただいまです」「ただいま〜」
「あ、お帰りなさい。マオさん、ハルカくん」
「おあ、二人とも! 無事で何よりだ!」
「私たちが先に帰ったですか」
「ええ。マリア様四人はまだ帰ってないわ」
「ハルカが帰ってきたのなら私が様子見に行こうか?」
「アスカさんはこっちの手伝いをしてください」
「何故だシズク! マリア殿が心配ではないのか、この薄情者め!」
「短絡的なんですよアスカさんは。シズクは単に心配する必要が無いから言ったんです」
「まあ確かに。うちの最大戦力の殆どが行ってるからねぇ」
「私もその一人だぞ!」
「だからここで防衛してるんじゃないですか」
「騒がしいぞお前ら。何かあったのか?」
「あ、レオンさん。作業一段落したんですか?」
「うるさいから一旦止めた。んで、飯はまだか?」
「今できました。なので皆さん運ぶの手伝ってください。あとお二人も帰ってきて早々ですがお願いします」
「はいです」「は〜い」
「今日は何だ?」
「肉料理です。今日の収穫次第ですが、腐らせるくらいなら思いきって使い切ろうかと」
「うむ。さっきから早く食べたくてしかたなかったぞ!」
「ハルカさんは食い意地張りすぎです」
「まあでも仕方ないわ。久し振りの御馳走だもの」
「ボクとしてはさっさとここから移動したいけどね」
「それもマリアたち次第か…」
「ただいま帰りましたわ!」「帰ってきたのじゃ」「只今 帰還 しました」「帰りましたけど…」
「お、丁度じゃねぇか」「だねー」
◆◆◆ 荒野 某山岳地帯 ギルドハウス ◆◆◆
「うわぁ…」
ドン引きしたハルカは思わずそんな言葉をこぼす。
「おお、大量じゃないか!」
「本当ならもっとあったのじゃが全部は無理ゆえ、厳選して運んできたのじゃ」
「じゃあもっと狩っていたのかしら?」
「多分…700くらいいたと思うんですけど…」
「今回 かなり 釣れた」
「本来なら絶滅云々言われそうだが…。まあ、魔物だから生態系には影響ないか」
「どうかしら? これなら当分困らないですわよね?」
「え、ええ…。当分、大丈夫です」
(保存量のキャパが合わないから殆どが無駄になるんだけど…)
なんて事を思っていたが、今の雰囲気に水を指すほど野暮ではないと、シズクはひとり心にしまっておく。
「じゃあ早速保存庫へ運びましょう」
「あ、なら日持ちが長い物は置いといてください。シズクが何とかします」
「あ、やっぱり入りきらないのか」
レオンがシズクの配慮に察しがついたようで気にかけてくれた。
「ええ」
「なら即席で保存庫を増設するか」
「いいんですか?」
「まあ一応お嬢に聞いておくか。おーい! お嬢! ちと相談だ!」
「なんですの?」
「今の保存庫じゃあ入りきらないから資材使って予備のを作るつもりだがいいか?」
「ええ。問題ありませんわ」
「即答ですね。もしかして最初から?」
「勿論ですわ。先程マオさんとハルカから話を聞きまして。それで、いよいよ次の町に行っても良いかと判断しましたわ」
「おお、やっと移動か! 長かったなぁ…」
「仕方ありませんわ。前例がある以上、迂闊に街へ入れませんもの」
「じゃあそこで余った素材を売るんですね」
「ええ。それを見越して多目に狩ったわけですわ。さあ皆さん! 明日いよいよ移動開始です、各自準備を怠らないように!」
はーい。と了解の返事が返ってくる。
「さあレオンさん。増設の方、お願いしますわ」
「おう、任しとけ」
「シズクも、素材の選別をお願いしますわ」
「わかりました」
◆◆◆ ギルドハウス 倉庫内部 ◆◆◆
どうもこんにちは。『もふもふファミリア』の料理兼家事担当のシズクです。只今倉庫の素材を整理しているところです。
先程までのモノローグから一変して、しばらくはシズクの語り部にお付き合いください。
さて、聞いている方は何が何やらさっぱりと思いでしょう。ええ、すごく共感できます。なにせ、シズクたちですら全貌を把握していないのですから。
こほん。失礼、それでは話にならないですね。順を追ってお話ししましょう。
私たちがいるここ、いえ、この世界と言った方が察しやすいでしょうか? 詰まるところ、シズクたちは知らない世界で放浪しているということになります。
それと後、シズクたちの姿にも説明した方がいいかもしれませんね。
(マリア殿。これは売る素材なのか?)
(ええ。そのツノはここらの貴重な素材だとマオさんが仰ってましたわ)
こんな風に倉庫の中にいても、外の声がはっきり聞こえるんです。人間の時より耳がよくなっているんですよ。
何故ならその耳は"狐"の耳、だからなんです。ええと確か、私たちは亜人。狐の獣人という種族なんです。いわゆる狐っ子ってヤツですね。
「気づいたら人から獣人になった」そんな創作ものの様な話が、私たちは今まさに体験しているわけです。けどイヤとは一度も思ったことはないですよ? 人でなくなった事に対しても後悔はありません。
理由は簡単。私たちは"好き"でこの姿になったんですから。
「なーに独り言言ってんだよ」
おや、倉庫に誰か来るなんて珍しいですね。まあ誰かは声でわかりますが。
「どうもレオンさん。今の私は語り部、独り言ではありませんよ」
「あ? …まあいいや。解体した素材ここに置いとくぞ」
「ありがとうございます。ところでレオンさん」
「なんだ?」
「レオンさんは、なぜ狐っ子を選んだんですか?」
「いきなり聞いたかと思えば…。あー、なんだ。あの尻尾がいいんだよ」
「尻尾ですか」
「ああ。最初は知り合いがそのキャラ作ってくれたら肖りたかったんだがな」
「それ変態ですよね」
「うるせー、ダチだったからいいんだよ!」
「でも結局自分のキャラでもふもふしたんですか」
「しかたねーだろ。期待値ナンバーワンの種族がまさかのハズレ性能だったんだから…誰も選びやしねぇよ」
「そうですね…」
そう。シズクたちはあるネットゲームのプレイヤーでした。
ゲームタイトルは『アクロス・フロンティア』。よくあるMMORPGです。様々な種族が新たな大地を目指し、そこで街を作り発展させる。決められたルートは無く、プレイヤーにほとんどの選択権を渡した自由度の高いゲームでした。
最初にアバターなる自身のキャラクターを作り、それを操作していろんな人と出会い、冒険し、別れてまた別の出会いを果たす。そんな感じなのでシズクも姉に誘われプレイするようになりました。
そのアバターの製作するときに、ヒト以外の種族を選ぶことができたんです。人間はもちろん、獣人、竜人、精霊などなど、列挙するにも時間がかかるほどありました。
「まあ人気がある種族ばっかりの世界はつまらないですからね」
「運営もそういうつもりだったのかもな」
そしてシズクたちの選んだ獣人の狐っ子という種族を選びました。姿も色々調整でき、色も変えられるおかげでシズクたちのギルドメンバーも色鮮やかになりました。まあ赤と黄色と黒と白の四色ですが。
それでなぜ残念種族なのかという話ですが、種族と補正が見事に噛み合ってなかったんです。ええ、残念なほどに。
獣人とは筋力と身体能力が高い殴って倒す様な種族なんです。そこからモチーフになった動物を数値化してステータスに足し完成、って感じです。
じゃあ狐はと言うと、魔力が高い。これだけです。ちなみに獣人には元々魔力の数値はありません。ゼロです。
まあそんなこんなで不遇種族として狐っ子を選ぶプレイヤーは少なく出会うのが稀だったと言うわけですね。
「あれ、話が脱線してますね?」
「いや知らんがな」
じゃあ修正するの面倒なのでこの後はレオンさんにお任せします。
「え、おい!?」
◆◆◆ ギルドハウス 鍛治部屋 ◆◆◆
はぁ、何で俺が…。
あ…? あぁ〜、なるほどな。
わかったわかった。じゃあここからは俺が語り部だ。
今備品の整備してるからそれのついでに、な。
「あーこれ錆びてきてるな。新しいの作らないとダメだな」
さっきネトゲの話してただろ?
俺たち不遇種族は、それでも選んだ。だから俺たちは勝ちプレイヤーというよりエンジョイ勢だったわけだ。
あ? それより今の状況が全然わからんだと?
んなこと言われても俺たちもさっぱりなんだから答えられるわけないだろ。だから今、順に説明してんだろうが。
わかったらおとなしく聞いとけ。
んで続きな。俺がこのギルドに入ったのは四番目だったか。確かそんな時期だ。まだギルド方針が同じ種族を探すって話だったはずだ。
そん時俺はソロやってたからさ。あいつ…お嬢のことな、そいつが俺を見つけて開口一番何て言ったかわかるか?
「あなたのもふもふが気に入りましたわ。もしよろしければ私のギルドにご加入頂けるかしら?」
「うお!? お嬢、いつの間に…」
「あなたの独り言が聞こえてきたから心配で寄っただけですわ。ところであなたのような人がなぜ独り言を?」
「後でわかる。今は無視してくれ」
「はぁ…?」
お嬢の言うとおり。その時の俺は呆気にとられて生返事しちまったよ。「何度その理由」って。
「私、あなたの独り言に反応してもよろしいのかしら?」
「ああいいぞ。俺はさっきシズク相手にしてたからな」
んで、なんやかんやあって今のギルドにいるわけだ。…詳細はまた別の時にな。
その後今の10人になるまではひたすら狐っ子を探して移動しまくってたな。ただ捜索してただけなのにレベルはモリモリ上がっていったのは笑ったがな。
「仕方ありませんわ。いるという情報があるならばたとえ高レベル帯のフィールドの探索も止む無しですわ」
「おかげでうちの火力職がある意味化け物になったがな」
おっと、今のはまだゲームの話だ。"今の"俺たちの話じゃないぞ。
んで、メンツが揃った後は色々やったな。残念種族と馬鹿にしていたやつらを見返すためにイベントランキングを荒らしたり、PvPで返り討ちにしたり。市場を陰で牛耳ったり。
「その罰が"これ"なのかもしれませんわ…」
「んなこと言ったら俺は運営を殴んぞ。理不尽すぎる!ってな」
まあ、"ここ"に来たタイミングは違うが、あのゲームで俺たちがやらかしたことは結構有名だったな。残念種族だけのメンバーでやらかしたんだから嫌でも知れ渡る。
「あー疲れた。丁度いいや。この後の展開はお嬢に任せるわ」
「え、ちょ、どういう意味ですの!?」
じゃ、俺は備品の製造すっから。またな。
◆◆◆ ギルドハウス 執務室 ◆◆◆
「ほう、それで儂らを呼んだのじゃな」
「ええ。任された今ならわかりますわ。なので私の独り言に付き合っていただけるかしら」
「まあこの後は寝るだけじゃしの。よいぞ」
「ん いいよ」
そうですわね。まず"この世界"に来た経緯からお話いたしますわ。
忘れもしない。『アクロス・フロンティア』のサービス終了の当日ですわ。
「結局最後までこのメンバーは変わらんだの」
「ん」
一時期加入希望者とかいましたけど、いずれも私たちの濃さに気圧されて去っていきましたわ。
それで、サービス終了当日に