4 リアル名探偵?!
3/7(02:20) 日曜に銀行が開いてる事になっていたので、休みをもらった事に変更。
最初のリーダー、橋田さんには色々教えてもらった。
普通に真似して作業できたので、教えたつもりはないかも。
ずっとあの現場かと思っていたが、数箇所変わった。
リーダーも変わる。
もうこの仕事を始めて1ヵ月だ。
会社が新しいからか小さいからか、普通に下請けと思ってたが。
実は「下請けの下請け」とか、もっとややこしいのもあるらしい。
給料は変わらないから社長や事務が色々苦労してるんだろう……。
記憶に残っているのは、鳶職の人たち。
足場を組んだりもするが、ビルの支柱を組む現場は壮観だった。
スルスルと組んだばかりの鉄柱を登り、次の鉄柱をネジ止めする。
鉄柱って言っても、クレーンに吊るされたバカでかいやつね。
確か彼らは森中興業って会社だったっけ。
全員紫の作業着でお揃い。
確かニッカポッカとかいう、ズボンの左右が広がったやつ。
大人の正統ヤンキー、というかかなり若い兄ちゃんが多かったな。
こういうのは、危険だが収入もいいんだろう。
で、僕自身はといえば。
4レベルも上がってレベル6。
何が起こったかといえば……
3箇所のコンクリートの工事が完成したかららしい。
スキル【見る】の答えだ、間違いない。
低レベルなので連続したが、これからはそんなに上がらないはず。
しかし、レベルの上がるイベントがそんなものとは。
自分一人で建築したわけじゃあるまいし。
そして残り1回は……
思い出したくもない。
いつか落ち着いたらまた説明しようと思う。
そしてムカつくのは毎度の(ぱんぱかぱーん)だ。
その時しか聞こえないので自動で再生されるっぽい……。
レベル : 6
体力 : 54/54
魔力 : 50/50
強さ :52
丈夫さ :53
知力 :54
器用さ :53
敏捷 :53
運 : 100
軒並み元の13倍以上、強さに至っては26倍だ。
まともに生活できるのは、スキル【見る】のサポートのおかげ。
無意識の力を振動で警告してくれるようになった。
対策を聞いてみて正解だった……。
もちろん常に自分自身でも気をつけなければならない。
慣れてきたとはいえ、レベルアップ直後は危険だ。
物を壊すだけなら救いはあるが、人を傷付けでもすれば……。
こうやって休みの散策中でも気を引き締める。
昨日帰りに、頑張ってるから今日は休みなさいと言われた。
社長直々に、水曜だが“特別有休”だと言う。
『あの件』のおかげだろうな。
あ、称号は変化なし。
軽作業請負人
とかでも許せるんだけどな。
うちの会社、人材派遣っぽいが正式にはどういう扱いなのか。
給料は毎日は出ないが、土曜に現金支給だ。
日雇いとは違うが……週雇い? よく分からん。
色々あって、もう給料は3000円も上げてもらえた。
仕事全体の手順などは素人なので責任者はお断りしているが。
以前より実入りが結構いいけど、引き落としの預金も入れないとね。
ちょうど銀行、手数料が安くなるな。
寄ってくか。
自動ドアが開くと……
後ろからでも一目瞭然、真っ黒の覆面男がフロア中央に。
確か……目出し帽ってやつか。
男に違いないな、このホームレス風のいでたちは。
「金を出せ!」
型通りの強盗だな。
初めて見た、当たり前か。
どうしよう。
どうもこうも、今のステータスなら楽に制圧可能だろう。
屈んで数歩進むと……
銃!?
包丁か何かと思い込んでた。
モデルガンとかとは僕には見分けがつかない、注意!
慌てそうになったが、頭に振動が来た。
5人くらい客もいるし、銀行員も犯人に注視している。
常人の動きを心がけねば。
犯人を大怪我させても一大事になるし。
男の背後から腕をねじ上げる。
いや、ねじったら危ないからな、普通に両手を持ち上げた。
これで銃が本物でも上にしか……
いや、ここってビルだよな、上の階に人がいたら。
僕の腕が瞬間移動に見えない程度に高速で動かす。
引き金を引かないように気をつけ、指を引っぺがす。
あうっ ゴトッ
拳銃が落ちた、痛みのせいかすぐ落としてくれたので助かる。
指が千切れたりしたらシャレにならない。
若い男性銀行員が走ってきた。
男女3名が続く。
男性の持っているのは多分梱包用のヒモ、太いやつだ。
ずっと動向を見ていたんだろう、素早かった。
犯人の両腕をヒョイッと後ろ手に回す。
固定しているのは腕だけだが、動きが取れない様子。
銀行員が慣れない感じで腕をぐるぐる縛る。
僕が手を緩めようとすると…ジタバタと動き出す。
こいつ必死だな、走って逃げそうだ。
「足も縛って!他の人はこいつ抑えて!」
僕一人の力でこいつが動けないとは想像もつかないのだろう。
腕を下げ、膝をつかせる。
ジタバタするのて、軽ーく軽ーくケリを入れる。
テキパキと足もぐるぐる巻きにされた。
「しっかり逃げられないよう力を入れて!」
このくらい言えば大丈夫か、手を離す。
(ぱんぱかぱーん)
うげ、来た。
レベルアッブ。
>逃走推奨
>顔を見られないよう
>ステータス初期値に調整済。意思で開放可能
スキル【見る】の情報となんか違う。
【認識】って出てる。
変化したのか?
だけどステータス調整は助かる、ナイスかも。
色々な付属情報が意識に飛び込む。
>指紋は残っていない
>しゃがんだのと犯人に隠れて顔ははっきり見られず
雑多な情報が他にも色々だ。
扉までタッタッと走る。
「あっ、ちょっと。あなた!」
銀行員の慌てた声は無視。
左手をちょっとだけ上げ、外に。
キマったかも?
内側から見えなくなった瞬間、ステータス開放。
全力で走る。
恐らく100メートル1秒以下か?
だが意識が追いついていて衝突はしない。
最初からずっと目で追っていなければ他人には認識できないはず。
スキルからの情報とゴチャ混ぜで思考している。
近くのどこかで隠れて……
上着を脱いで見た目を変えておくか。
しかし。
もしかして。
運100ってこういうのに当り易かったりするのか?
>運100は勇者補正の影響
>通常は勝利確率や怪我軽減、レベルアップし易さなど
>勇者補正としては、適正レベル魔物との遭遇率を上げる
まさかの正解!?
ということは、さっきの事もこの前の事件も運100のせい?
>そう思われる
つまり……
行く先々で事件が起こる、リアル名探偵?
やめてくれぇぇぇ!