21 挫折?
いつもの山中。
目標は究極まで空間魔法を極めること。
まだの物は……
>音・魔力の転移
>収納・転移での時間固定・逆行
>創造空間・虚無空間への転移
魔力の転移は他からの魔法攻撃を逸らすための物らしい。
とりあえず自分で火球を作って試す。
岩へ発射したものが川の水面に移動、落ちて消える。
音の場合も問題なし。
原理は分かっているからな。
時間の固定らしいことはできた。
ただし自分で作った空間内のみ。
ラノベで出てくるアイテムボックスやマジックバッグぽいね。
逆行はまだ手がかりがない。
恐らく、理論的なものじゃなく魔法的な思考が必要だろう。
偶然にでも似た現象を起こせれば手がかりが掴めるかも。
実は迷ったんだ。
日中ずっと悪として活動をやるのかどうか。
昨日は多分、井原さんと話せる喜びでどうかしてた。
脳内にアドレナリンが出まくってたに違いない。
後で自分がやった悪のショボさに落ち込んだ。
どうも、僕の “井原さん病” は深刻らしい。
早く直さないと。
そのためには悪を極めて……
ダメだダメだ。
実はそもそも、悪の最初のイメージとは……
空き缶やタバコをポイ捨てするバカども。
カツアゲや弱者への暴力。
そいつらを軽くヒネる。
まずは当然昼間、人の多い苦谷方面。
だけど……
運100がどうのと文句を垂れてた癖に。
これからも会う井原さんをも危険に晒してどうする。
とんでもないバカだ。
都市部を転々と移動すれば特定されない?
北海道や沖縄にでも行くか?
だがそんなに甘くはない。
今はスマホで簡単に撮影できSNSで拡散される。
それを続けたとして、現実的に行き着く先は見えている。
覆面レスラーのマスクをするか?
新しい迷彩魔法で顔や体を偽装するか?
いずれにしても、少し話題になって終わりだ。
自己満足だけだ。
警察官全員がステータス持ちにでもならなければ。
創造空間・虚無空間への転移魔法は成功した。
創造空間というのは言ってみれば収納と同じ。
造作もなかった。
虚無空間……
消去してしまうということだ。
ちょっと怖い。
伝説や物語の中だが。
空間魔法を極めた者たちは敵に消されても戻れたらしい。
最後に目指すのはそのレベルか?
今日はバイト終わりの井原さんを迎えに行った。
通用口から出てきた彼女が手を上げて近づく。
こっちも手を上げるんだっけ?
バイバイ以外はやった事無いからね。
女子2人がこっちを見てヒソヒソ話している。
別に見られてもなんてことはない……。
土曜も例の公開放送をやってた。
ゲーム回だが、やった事ないヤツだ。
実況後、複数プレーヤーの画面切り替えの苦労話。
まあ知らないゲームで良かった。
ペラペラ知識をひけらかしても自分らしくないし。
何も分からない彼女に話しても仕方ないし。
ペラペラとか、多分ムリだけど。
こういうのはなんとなく楽しめればいい。
思考だけは絶好調だな。
ハンバーガー屋だ。
彼女と会うたびに入り浸ることになりそう。
「どっこいしょ」
井原さんが座りながら発した言葉だ。
ツッコまないと。
「あの、彼氏とは大丈夫なんです?」
しまった、ずっと聞こうと繰り返してた言葉が出た。
いきなり過ぎだ。
「あっはは。いないから」
嘘のようには思えない。
第一、嘘をついてどうする。
マンガで、罰ゲームで付き合うフリをさせられるのがある。
そういうのにしては壮大過ぎる。
ダメだ、話した途端になんかドツボにはまってるぞ。
そんなワケはない。
聞く前に望んだ答えが。
「ずっーとよ。
昨日話した続き。
それからもね、女同士で話しても異性はムリで」
これほど可愛ければ告白されまくったはず。
超能力か魔法でも持ってるように答えが返ってくる。
いや、続きを話してるだけか。
「高校じゃあまるで忍者のように隠れまわってたし。
不思議とそういうあだ名はつかなかったけどね」
まあそりゃそうだろうね……。
「だから、ちょっとだけ余くんのことは気にしてたよ。
でも今は……」
「失礼します。お話中、申し訳ありません」
うわっ、僕としたことが気づかなかった!
隣の県まで感知できるのに。
20代?後半か。
メガネはしているが俳優のように整った顔。
スーツが決まっている。
カッコイイ大人というやつだ。
「やましい類の者ではありません。
神代と申します。」
僕に名刺を渡してきたので受け取る。
「余計なこととは存じますが。
名刺は両手で受け取られるのがよろしいかと」
神代 一
神代プロダクション社長
?
というか、なぜ僕に渡す?
「余さん、ぜひ弊社に入って頂きたいのです」




