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明日を切り拓く二つの光

 超巨大な、光の柱と呼ぶに相応しいサイズになった聖剣が、長大な質量となって魔王を押し潰すように襲いかかる。


「ふ、ふざけるなあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!」


 迫り来る聖剣に、魔王は自信が持つ最強の技である黒の波動を放って迎え撃つ。


 次の瞬間、白と黒の力が激突し、天地がひっくり返るかと思うほどの衝撃が生じ、反動で床がめくり上がり、部屋を支える柱が倒れて天板が落下してくる。



 まるでこの世の終焉を思わせるような破壊の中、魔王が溜め動作無しで放たれた黒の波動は、威力こそライルを殺した時と比べると劣っていたが、それでもリリィたちの振り下ろした聖剣を正面から受け止めてみせる。


「こんなっ! ことっ! 絶対に! 認めんぞ!」


 連続で黒の波動を放ちながら、魔王は聖剣を押し返そうと試みる。


「この我が……完全体となった我が、こんな似非聖剣(にせもの)如きにやられるものかああああああああああああああぁぁぁ!!」


 数え切れないほど連続で黒の波動を放ち続けた結果、最初は拮抗していた両者の力が徐々に魔王側へと傾く。



 それを見て、魔王の顔に笑みが浮かぶ。


「ハッ! このまま我の絶大な力をもって押し返してええええぇぇ!?」


 だが、その顔がすぐさま驚愕のそれに代わり、顔色がみるみる青くなる。



 魔王の視界の隅に、もう一本の光の柱が誕生するのが見えたのだ。


 その根元で光る剣を高々と掲げた姿勢で立つ過去の勇者を見て、魔王は口角から泡を飛ばしながら叫ぶ。


「ひ、ひひ、卑怯だぞ! 聖剣がもう一本あるなんて聞いてないぞ!」

「フフッ、だって言ってないからね。そもそも、別に君に言う必要はないだろう?」


 過去の勇者は肩を震わせて笑うと、


「さあ、いくよ! ディバイン、ソオオオオオオオオオオオオオオォォド!!」


 大きな声で、自身が付けた聖剣の名前を叫びながら腕を振るう。



 過去の勇者が振るった聖剣は、ライルたちが放った聖剣と遜色ない質量で魔王へと襲いかかる。

 二つ目の聖剣が衝突すると、魔王側に優勢だった黒が一転して白の攻勢へと変わる。


「ぐっ! ぐぎぎぎ……」


 魔王は歯を食いしばって尚も黒の波動を放ち続けるが、それでも二本の聖剣の力には及ばず、みるみるうちに追い詰められていく。


「こ、こんなの……こんなの認めんぞ!」


 魔王はライルたちを血走った目で睨みながら呪詛の言葉を吐く。

「おのれ! 勇者共め! このままで……このままで済むと思うなよ!」

「フッ、最後の言葉まで三下のそれだな」

「黙れ! 黙れ黙れ! この裏切り者があああぁ!」


 ライルに嘲笑され、魔王は悔し気に地団駄を踏み鳴らしながら喚き散らす。


「魔の力を持ちながら、勇者に与する恥知らずが! お前だけは……お前だけは絶対に許さぬぞ!」

「ハッ、それはこっちの台詞だ」


 憤怒の表情を浮かべる魔王に、ライルは真正面から睨み返しながら叫ぶ。


「魔王と勇者が織り成す気高い戦いを汚す毒虫が! 今一度闇に返って、その腐った性根を叩き直して来るんだな! おい、リリィ、勇者よ。この毒虫に止めを刺すぞ!」

「はいっ!」

「わかった!」


 三人は頷き合うと、


「「「いっけえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇ!!」


 一斉に叫びながらさらに聖剣に力を籠めて振り下ろす。



 その叫びに応えるように、二本の聖剣はさらに輝きを増して魔王へと襲いかかる。


「ぐっ……このぉぉ……」


 魔王はなおも抵抗を試みるが、力を増した聖剣の圧力に適うはずもなく、体が光に飲まれる。

 光に飲まれた先から魔王の体が朽ち、ボロボロと崩れ始める。


 そうして両手を失った後は、一方的だった。

 魔王の体がみるみると光の奔流に押し潰され、


「う、うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!」


 最後に醜い断末魔の叫び声を上げながら、光の彼方へと消えて行った。




 魔王の体を完全に押し潰した二つの聖剣が消えると、リリィはその場に崩れ落ちて肩で大きく息を吐きながら魔王が立っていた場所を見やる。

 そこは魔王がいた痕跡は一切なく、巨大なクレーターができていた。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 今の実力では聖剣の力は身に余るので、とても魔王を倒した手応えを感じることができなかったリリィは、確認するようにライルに尋ねる。


「お兄様……これは、やったのでしょうか?」

「はぁ……」

「ふぅ、やれやれ、だね」


 思わず漏れたリリィの呟きに、ライルと過去の勇者が揃って嘆息する。


「えっ、お二方、一体どうしたのですか?」


 明らかに落胆した様子の二人を見て、リリィは戸惑いの表情を浮かべる。


「あ、あのお兄様……私、何か至らぬことがありましたでしょうか?」

「リリィ……今後は間違っても、戦闘後にそんな戯言は言うなよ?」

「えっ、ええっ!? お、お兄様、どうしてですか?」


 驚き、戸惑いながら問いかけてくるリリィに、ライルは呆れたように肩を竦めながら話す。


「今の一言……やったか? という言葉はな? 相手が倒せなかった時に紡がれる言葉だからだ」

「えっ、で、では魔王は?」

「ああ、奴は生きているよ」


 リリィの希望を打ち砕くような一言を、ライルはあっさりと告げた。

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