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19 転校

 相変わらず、太一は好きな教科を授業に関係なく読んでいたし、黒板に目を向ける事もなかった。

 体操着は前の中学校で同級生から貰ったぼろぼろのもので、印刷された校章もそのままであった。

 級友たちは、珍しげに構ってくるが、笑って返していた。

 父親は、何も知らない。学校から帰れば、夕飯の支度がある。

 太一は喋らない。何故なら、言っても変わらない事を知っている。殴られるだけである。

 学年末、進路を決める三者面談と言うものがある。

「パン屋に行きたい」

 太一にしてみれば、とにかく、食い物があれば良いだけだったのである。

 太一は、担任の前で父親に殴られた。初等教育の赴任地域は、狭い。教師たちは顔馴染みである。担任は黙って見ていた。

「工業高校に行く」

また、殴られた。

 太一の成績は悪くはない。その頃に、日曜日に校舎で行われていた業者試験

も拒否していた。父親は知らない。

 太一の兄はその頃、大学生であった。母方から高校、大学と行ったので太一と会う事はなかった。

 父親の酒癖が更に悪くなったのも、転校してからだった。太一は酒屋に行って土下座した「うちに酒を売らないで下さい」と。

 教師としての世間に見栄をはらざるをえない父親、それを視る太一だった。

 太一にとって決定的な日だった。父親が酔って、タクシーで出掛けていった。そして、夜半すぎに帰ってきた。服には血がついていた。

 兄が結婚したいと言ったのだ。学生結婚である。相手は教師とは比較にならない、かなりの地位にある人の娘であった。

 相手方は結婚を承諾するよう話したが父親は拒絶した。妊娠していたのも、おろさせた

と。兄は大学をやめて母方に逃げた。

「投げてきた」

 血のりを付けた父親は言った。そして、太一は知った。

 その時、太一は決めたのである。「家は出なければならない」そして、絶対、結婚はしないと。

 太一が三者面談で殴られた後、これなら、文句はないだろうと国立の学校を受けた。寮があり、家を出られるから。ただ、それだけだった。

 相変わらず、授業とは別な好きな教科しかしないから成績は悪いし、教師を信用していない。

 ある日、家に帰った日だった。父親は近所の警察官の家に飲みに行っていた。

 太一は玄関の鍵を締め、寝てしまっていた。夜半すぎ、ガラスの割れる音がした。

「鍵をしめたな」

 布団から身を起こした太一に父親が殴りかかってきたのだった。寝惚け眼の太一は反射的に手が出てしまったのだった。

 思わぬ反撃に父親は再び、出て行った。

 その時、太一は決めたのである。「家は出なければならない」そして、絶対、結婚はしないと。

 太一が三者面談で殴られた後、これなら、文句はないだろうと国立の学校を受けた。寮があり、家を出られるから。ただ、それだけだった。

 相変わらず、授業とは別な好きな教科しかしないから成績は悪いし、教師を信用していない。

 ある日、家に帰った日だった。父親は近所の警察官の家に飲みに行っていた。

(親を殴ってしまった)

 ただの一発だった。

 太一は台所から米の袋を探し、風呂敷に包んだ。それから、父親の財布から一万札を抜き捕った。それから、何故かマッチの大箱。まだ夜中の四時前、駅の近くで始発列車を待った。まだまだ明け方は寒い時期、捨てられた漫画本にマッチで火を付け暖をとった。

 駅に着く。隣にタクシー会社があった。

「あら、うちの学生だよね。一緒にいきましょう」

 太一は知らないが、多分、事務系の女性なのだろう。

 まず、同じ名字の先輩に印鑑を借りる、学生課に行き、休学、退学届けの用紙をもらい、退学に丸をして判を押した。


 それから、風呂敷と鞄を手に駅に向かった。

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