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これが俺達の冒険譚


「んじゃ、優さんにはここで死んでもらおっかな」

「せいぜい囮役頑張れよ~」

「もう少し役立つ人だと思ったのになぁ、まさか弱い上に……こんなモノ連れてるなんてねぇ」



 ふざけるな――



 俺の中で何かが崩れる音がした。

 何度目かとなるこのダンジョン探索で、俺は仲間に騙された。

 いや最初からコイツらは俺を仲間だと思っていなかったのかも知れない。

 


「お前らは……お前らは何がしたい……」



 ボロボロになり、最初パーティを組んだ時に仲間――いや、敵が俺にくれた防具は全て剥がされ、抗った結果呆気なく折れた短剣も、今やガラクタへと成り下がっている。

 そんなモンスターの格好の餌となった俺を見下ろす三人の敵は、さっさとコイツ殺して帰ろうぜと、一人の女が手に持っている白いスライムを指さす。


 やめろ――


「まぁ殺した所でなんもないんだけどな、ひひひっ」


 目を閉じ、意識を失っている白いスライムを、ほーれほーれと、汚い手で触る男に、俺は憤怒で胸を一杯にさせ、涙を浮かべながら声を上げる。


「頼む! 俺を殺してもいい! その代わり、その代わり! 彼女だけは……智夏だけは――グハッ!!」

「黙れ。誰がお前の命なんか欲しいんだよ。いいか、1つだけ死ぬ前に教えてやる。俺達はなぁ!?」


 それまでずっと黙っていたこのパーティのリーダーである男は、俺の顎を自慢の剛腕で砕き割り、卑劣な目で言い放った。


「生き物を殺すのがだぁぁい好きなのさ!」


 と、


 あぁ、ダメだこの目は……。



 この目はもう、この世の物じゃない――



 人間の形をした化け物だ――


 畜生、畜生、畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生ッ!!


「それじゃ、さよーならッ!!!」

「――っ!」


 直後、声を発するよりも先に俺は華麗に吹き飛び、空中に浮遊した変な感覚と共に、白いスライム――智夏、俺の……俺の大事な彼女の身体の中心に、女の槍が突き刺さった――


「~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!」


 声にならない怒りが込上げる中、俺は地面に叩き付けられる。


「うわ、汚ねぇ! 何この液~!」

「サリーお前汚ぇぞ、ふははは」


 そんな卑劣な声を上げるゴミを他所に、俺は目を閉じ意識を遠ざける。



 俺は………………。





 どうしようもないほど………………。





 弱い――


 


 ごめんな……智夏、俺、守れなかったわ――


 涙なのか血なのか分からない熱い液体が、頬を伝っているのが分かる。


 最後に……最後にもう一度だけ智夏の顔……見たかったな……。


 脳裏に満面の笑みを浮かべる智夏を思い浮かべ、優しい声が響く――




(ゆーくん、世界でいっちばーん大好き! これからもずっと一緒にいて下さい! あ、トイレは着いてきちゃダメだよ! それ以外ならずっと一緒ね! あぁ!! そう言えばこの間ハンバーグ作ってくれるって言ったのに作ってくれてない! 嘘つきだ! 泥棒だ!) 




 あ、そういや俺、ハンバーグ作り忘れてわ……。


 ぷりぷり怒る智夏を見て、俺は頬を緩める。


 だって、その後すぐスライムになっちゃうんだもん……。もっと早く作ればよかったな……。大丈夫。俺もすぐそっちに行くからな……。お前を一人になんか絶対にしない、そしたらハンバーグも作ってやるし、一緒に出来なかったこともっと一杯しような――





 こうして、俺達のちょっと変わった冒険譚は――




 ――スキル【スライムボディ】を一部使用しました――

 



「「終わらせない」」

 

新作でございます!!


まだまだこれから頑張っていくので、宜しければ応援お願いしますー!!!(っ´ω`c)

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