ほぼほぼ説明会❰読み飛ばし推奨❱
色々吹っ切れたし、疲れた書き直しでした。
でも、成長した気がする。
「ようこそおいでくださいました。転移者様」
御華がゲームに入ってすぐ、真っ暗な世界から年老いた……でも、耳にスゥーっと入る様な綺麗な声で話し掛けられた。
「だ、誰!?」
驚いた御華はキョロキョロと辺りを見回しながら声の主に問い掛けた。
「?……あぁ、なるほど。これは失礼しました。今明るくしますので、目を閉じていてください」
「う、うん……」
何がなんだが分からないままの御華だが、取り合えず指示通りに目を瞑った。
パチッ!
「もう目を開けて大丈夫ですよ」
「うっ!」
御華は目を開けようとしたが、眩しすぎてクラっと後ろによろめきながら呻いてしまう。
「慌てずに、ゆっくりと目を開けてください」
「……わぁ~~!!綺麗~~!!」
声に従ってゆっくりと目を開けた御華の前に広がったのは、執事服を着こなす白髪の老人とその周りに広がる幻想的な光景、空は暗く、空中にはキラキラと……まるで御伽噺に出てくる妖精の如く色取り取りに光輝く粒子が漂い、下を見ると地面は無く、その代わりに底が見える程に透き通る湖があり、遠くを見れば湖を囲うようにして並ぶ鮮やかな草木達……まるで御伽噺の世界に来てしまった様な感動を見たものに抱かせる。
「お褒めに預かり光栄です。頑張って造ったかいがあります」
「ここを造ったの!?」
この幻想的な光景が造られた事に御華は驚く。
(ここまで驚かれると歯痒いですが、同時に嬉しいものですね)
御華の驚き様に老人は心の中で照れる。
「凄い!凄い!どうやって作ったの?!」
御華はしゃぎながら老人に聞いた。
「秘密でございます」
「え~~~!!」
お預けされた猫の様に、御華はションボリとする。
「転移者様、残念そうにしてる場合ではありませんよ」
「どう言う事?」
意味が分からず御華は首を傾げた。
「この世界で暮らす為に必要なステータス(情報)を決めねばなりません」
「何それ?!どうやれば良いの?!」
ステータスと言う聞き慣れない言葉に興味を引かれた御華は前のめりで老人に聞いた。
「スタート、そう声に出せば始まります」
「へっ……」
どんなカッコ良い意味があるのかと期待していた御華はシンプルな言葉にポカーンとしてしまう。
「聞こえませんでしたか?」
「あ、あの……それで表示されるの?」
そうであって欲しくないと願いながらも御華は、一類の望みをかけて老人に質問した。
「そうですが、何か問題がありましたか?」
「な、なんでも無い……」
幻想的、綺麗、ファンタジー、この三拍子が揃えば、ステータスもカッコいい意味があるのだと期待を抱いていた御華はこの瞬間、その期待が砕け散る。
「転移者様が言うのならば、私は何も言いません」
「ありがとう……」
聞かれなかった事に御華は感謝をしつつ、気を持ち直す為に自分の頬を叩く。
パン!
「よし!スタートって言えば良いんだよね?」
「はい。その通りでございますが、もう言っておりますよ」
「えっ……」
御華が唖然とすると同時に御華の視界いっぱいに薄オレンジ色の画面が標示される。
「えっ?えっ?ええ~~!?」
唖然から戻って来た御華は混乱と戸惑い、驚きが混じりあった叫び声を上げた。
「何か問題でもありましたか?」
「あ、あの……はっ!」
「もう一度やり直したい」っと言いたかった御華だが、画面に自分の体が映ってると気づき慌てて自分の体をかき消そうと腕をブンブンと振るう。
「……これは失礼しました!!女性の裸を見るのは失礼にあたる事を失念しておりました。遅くばせながら謝罪いたします。すみませんでした」
老人は直ぐ様頭を下げて謝罪した。
「そ、それよりあっちを向いて!」
画面に映ってる体とは言え、自分の体が見られてる事に恥ずかしい御華は顔を真っ赤にさせて叫んだ。
「承知しました」
視界にいれないように老人は頭を下げたまま後ろに体を向けてから顔を上げた。
「うぅ~~~~!!」
まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった御華は顔を両手で隠すとしゃがみ、声にならない声で呻く。
「申し訳ありませんが、お話しても良いでしょうか?」
老人は躊躇しながら、御華に聞いた。
「…………うん」
長い沈黙の後、御華は小さく返事を返した。
「ありがとうございます。早速ですが、転移者様、今映し出されております画面について説明は要りますでしょうか?」
「お願いします……」
羞恥はまだあるが、見られなくなって御華はホッと安堵しつつも、頼んだ。
「承知しました。説明させていただきます。転移者様が見ておられる画面の名は、『身体情報設定画面』と呼ばれる自分好みに出来る設定画面であります」
「し、しんたいじょうほうせっていがめん?」
ややこしい名前に御華は頭にハテナをいくつも浮かび上がる。
「簡潔に言いますと、この世界で生きて行く上での見た目を決める画面でございます」
「なるほど!」
その説明でやっと理解できた御華は興味津々に目の前にある画面を見る。
「次に、使い方を説明させていただきます」
「はい!」
早く色々と試したくて仕方が無い御華はウズウズとしながら返事をした。
「まず最初に頭に触れて見てください」
「こう?」
御華は画面にある自分の頭に触れるとバッ!と音がしそうな程に多くの髪型や配色が映る画面が周りに広がる。
「わっ!」
御華は急に周りに現れた画面に驚いてしまい、とっさに目をギュ!っと瞑り顔を両腕で覆う。
「危険ではありませんので、落ち着いて目を開けてください」
「う、うん……」
老人に促された御華はゆっくりと腕を解き、目を開ける。
「わぁ~~」
そこに映し出された画面を見て御華は感嘆の声を漏らして見回す。
「満足いただけたようで何よりです」
「うんうん!色々試してみて良い?」
「はい。存分に楽しんで下さいませ」
「やったーー!!」
御華はさっそく色々と弄ったりして自分をカスタマイズして行く。
「髪型は何が良いかな?ツインテールも良いしショートボブも良いかも!あっ、慣れているストレートロングにした方が良いかな?うう~~!一杯あって悩む!でも楽しい!!」
御華はこっちかな?こっちも良いかも!!っと色々と悩みつつ、楽しそうに髪型や髪色を変え、それが終われば顔や身長等を弄って行く。
それから約2時間後、遂に完成した。
髪は透明のストレートロング、それ自体に色は無い筈なのに光に照らされると雪のような真っ白な髪に変幻し
顔はあどけなさの残る可愛らしい顔から大人びた顔に変え
瞳はピンク色、しかし、上下で色の濃さが違う。下が明るいピンク色なのに対して、上に行くほど薄いピンク色になり、その奥にはうっすらと紫色が見えると言う不思議な色合
身長は174cmと高身長、それだけを見れば身長が高いだけとなるが、大人びた顔とスレンダーな見た目はそれをワンランク以上も上にあげ、キリッ!としたカッコよさがあった。
「うん!」
その出来を見た御華は満足そうに一つ頷く。
「完成しました!」
声から満足していただけたと理解して老人は頬を緩めてしまうが、すぐに意識を切り替えて問い掛ける。
「満足行く出来になったようで嬉しい限りです。では、次に移ってもよろしいですか?」
「はい!」
「承知しました。次の画面に移らせていただきます」
御華が返事を返すと老人は手元に画面を出現させると何かを打ち込んで行く。
「?」
御華は何をしてるのか気になり、ゆっくりと音をたてない様に気を付けながら老人に近づいて行く。
(後少し、後少しで見れそう……)
老人にバレ無いように恐る恐る横から画面を覗こうとした時、背後から声を掛けられる。
「覗くのは止めてくださると助かります」
「わっ!!!」
予想だにしない所から声を掛けられた事に驚いた御華は体を跳ね上げさせた。
「はぁはぁ、い、いつの間に……?」
バクバクと鳴る心臓を両手で押さえながら、御華は後ろを振り向いて老人に聞く。
「こう言う事が起こるので気を付けてください」
老人は質問には答えず、ただニッコリと笑みを浮かべて注意だけをした。
「う、うん……」
その笑みに薄ら寒いものを感じた御華は引き気味になりながらも頷く。
「理解いただけてありがたいです。では、次の準備が出来ましたので移らせていただきます」
「うん……はい!!」
御華は老人に恐さを感じていたが次にどんな事をやるのか楽しみ!っと言うワクワクした感情が勝り、返す返事にもその感情が込もっていた。
「まずはこちらの画面を見てください」
言葉越しにワクワクした感情が伝わって来た老人は頬を微かに緩めながら、御華の前に画面を映し出す。
「おおーー!……何これ?」
さっきと同じように凄いのが出てくると思った御華は歓喜の声を上げるが、実際に目の前に現れた画面を見て疑問の呟きを漏らした。
「職業選択画面です。この5つの職業からやりたいと思う職業をお選びください」
「職業……」
職業と言う響きに興味を引かれた御華は5つある職業の内容を見ていく。
※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇
剣士
全ての剣士の元。どう戦うかによって職は変わる。己がどう相手と戦ったかによって、特化するか、万能型になるか、変わる
魔術師
全ての魔術師の元。どう鍛えるかによってなれる職は変わる。
特化するか、万能型になるか、それは己次第。
格闘家
全ての格闘家の元。拳に込めた想い、拳を何に使うか、意思と覚悟次第でなれる職は変わる。貴様は己の拳に何を込める!
魔物使い
魔術師に分類されながらそれに当てはまらない職。
だが、この職は最初から中級職である上に、職業条件が難しいが故に初級から選べるようになっている。
生産者
全ての生産者の元。全ての生産に対して満遍なく効果を発揮する。
どれか一つに絞り特化するか。
満遍なく鍛えて、万能型の生産職にするかは己次第。
※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇
「おおーー!!凄そうなのが一杯ある!!!」
読み終わった御華は瞳をキラキラと輝かせながら画面を食い入るように見詰める。
「じっくり考えてください。この中から選んだ職業が今後の未来を左右します」
老人は御華に忠告すると一歩後ろに下り、傍観の姿勢をとる。
「うん!!!」
御華は力強く返事をするとどんな職業に就きたいかを考えて行く。
(剣士!剣士って言ったら英雄だよね!!ドラゴンと一騎討ちをする姿はカッコ良かった!!でも、格闘家もカッコ良い!!自分の拳で戦う!何か引かれるものがある!!魔術師は魔法が使えるのも良いな~~!!勇者のパーティーの魔法使いみたいな事が出来るって事でしょう?!魔法を使うなら魔術師の方が…いや!魔物使いとかもあり!!最初から中級職って言う特別感が良い!!生産者も良いかも!!料理を作ったり衣服を使ったり出来るのがこの職だけだと考えると生産者一卓!!でも、他の職も気になる……)
御華は何度も職業内容を読み返してどれにしようか凄く悩む。
(どれもやってみたくて決められない!!全部一緒にやれる方法が無いかな?……聞いてみよう)
悩んだ末に御華は老人に聞いて見る事にした。
「あの!全部を一緒にやれる方法ってある?」
「全部やる方法ですか……」
老人は目を瞑り、その方法が無いか考える。
「…………」
その様子を見ている御華はドキドキと鳴る心臓の音を聞きながら方法がある事を願う。
「ありますよ。ですが、その道は茨の道となるでしょう」
暫くの時を経て口を開いた老人から出て来たのは遠回しの無茶だと言う言葉……しかし、それが分かっていても一度やりたいと思った事は諦めたく無い御華は茨の道を選ぶ。
「それでもやりたい!!」
「後悔しますよ?」
老人は御華を見詰めて、もう一度同じ問い掛けをすると御華は力強く頷いた。
「それでもやりたい」
「分かりました」
瞳から、言葉から本気だと理解した老人は多少の呆れを声に含ませながら了承する。
「全ての職業を使えるのは魔物使いです」
「どうして魔物使いなの?」
思ってもいなかった職業が出て来て御華は首を傾げながら聞き返した。
「魔物には魔職と呼ばれる職業と対を成す力があるのです」
「職業と対を成す?」
知らない情報が出て来て混乱して来た御華は最初に気になった事から質問する。
「はい。職業と呼ばれるものは何なのか分かりますか?」
「えっ、えっと~……仕事?」
逆に質問された御華は必死に考えた末に出た答えを言った。
「間違いではありません。転移者様の世界なら正しい答えでしょう。しかし、この世界では別の意味があります」
「別の意味?」
どんな意味があるのか分からず眉を寄せて難しい顔をしながら聞き返す。
「はい。職業とはこの世界で生き残る為の力……つまり、武器です」
「武器?」
(生活する為にお金と仕事は大事だってパパとママは言ってたけど、それがどうして武器になるんだろう?)
御華の頭の上に疑問符がいくつも浮かぶ。
「何故必要か。疑問に思っていると思いますが、そこから先は機密になりますので話せません」
「ええ~~~!!」
気になる所で止められた御華は不服の声を上げて半目で老人に先を話してっと見詰める。
「知りたいのであれば、自ら探しだしてください。職業が何なのかについて調べたり、探したりするのもこの世界での楽しみになると思いますよ?」
「むぅ~~~分かった」
その提案に御華は不満げな声を上げながらもワクワクする気持ちが勝り、渋々ながら頷く。
「ご理解していただきありがとうございます」
「でも、魔職については少しでも良いから教えて!」
御華の興味を引かれた魔職について知りたい御華は老人に頼み込んだ。
「良いですよ。ご理解していただいたお礼に少しだけですが、お教えしましょう」
知りたいとキラキラと輝かせながら瞳で語る御華に老人は微笑ましく思いながら話す事にした。
「やったーーー!!」
教えてもらえると分かると御華は跳び跳ねながら大声を上げて喜ぶ。
「嬉しいのは分かりますが、落ち着いていただいても良いですか?」
「はい!」
今からどんな話が聞けるのだろうとワクワクとした面持ちで元気に返事をする。
「では、魔職についてお話しましょう。まず最初に言わなければならないのは、魔職は職業と呼ばれる力よりも後に生まれた力です」
「対の力なのに?」
疑問に思った御華はそう聞いた。
「はい。ですが、それについては機密ですのでお話し出来ません」
「むぅ!じゃあ、他に何が話せるの?」
気になる御華だが、少しだけと言われていたのを守って他に話せる魔職の情報を老人に聞く。
「そうですね……魔職と職業の違い、とかですね」
老人は思案顔になると、自分の顎を擦りながら考えた後に御華にそう答えた。
「っ!!詳しく話して!」
興味を強く引かれた御華は頭突きするんじゃないかと思う程の早さで老人に向けて体を突き出す。
「承知しました。職業とは違い、魔職は種類事に職が決定されてしまっています」
老人は特に驚いた様子も無く、先程と変わらない声でそう話して行く。
「例えば?」
「魔獣であれば、魔獣職。魔鳥であれば、魔鳥職。聞いただけでは職とは言えない魔職ですが、職と名にある意味をお話して行きます」
「うん…!」
ここまで聞いた御華は今から話してくれる内容が凄いものが待ってると期待を膨らませつつも、緊張から唾をゴクリと飲み込んでからゆっくりと頷いた。
「魔職は種類事に最適化された力です。例ですが、魔獣であれば爪や牙、遠吠え等、出来る事を強化します。また、同じ行動をし続けると特化し、全てを均等に使って行きますと万能になる等、その個体にあった最適化と強さを得て行きます」
「凄い!!」
魔職の強さを聞いて行く内に理解した御華は叫ぶようにそう言った。
「確かに凄いですが、それは職業でも出来る事です」
「どう言うこと?」
魔職だから出来ると思っていた御華は疑問に思う。
「魔職と職業は対を成す力です。魔職で出来る事は職業でも出来ます。しかし、出来ない事もあるのです」
「たとえば?」
「進化です」
「進化?」
魔職がどうして進化に繋がるのか分からず御華は聞き返す。
「はい。魔物には秘めたる可能性と呼ばれるものがあり、それを魔職により引き出す事で、進化を促します」
「それは職業では出来ない事なの?」
純粋に疑問に思った事を御華は聞いた。
「不可能です。人種にはその可能性がありません」
「ッ!?」
老人はとても冷ややかな声で断言すると、それを誤魔化すかのように苦笑する。
「怖がらせてしまい申し訳ありません。少々、お話し過ぎました。これ以上はお話し出来ませんので、転移者様自ら調べていただきますとありがたいです」
「う、うん……」
老人と人との間に何かがあったのは何となく理解した御華は、老人から少し離れつつも頷いた。
「……次に移らせていただきます」
それに気づいている老人は罪悪感を抱きつつも、新たな画面を御華の前に映し出す。
※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇
STR
VIT
INT
MND
AGI
ポイント100
※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇
「何これ?」
英語が苦手な御華はなんて書いてあるのか分からず、疑問の声を漏らす。
「今見ていただいてる画面は能力値設定画面です。今から転移者様には基礎能力を決めていただきます」
「それは分かったけど、なんて書いてあるの?」
やって欲しい事は理解した御華だが、文字が読めない為なんて書いてあるのか老人に聞いた。
「それぞれ、STRが攻撃力。VITは防御力。INTは魔法攻撃力。MNDは魔法防御力。AGIが速度。ポイントは基礎能力値を決める為にあります。決められたポイントから転移者様の好きなように割り振ってください」
「ありがとう!!」
文字の意味を理解した御華は老人にお礼を言うとさっそくポイントを割り振って行く。
(攻撃力はあった方が良い!防御力も!魔法も使ってみたいけど、魔物使いって魔法使えるのかな?聞いてみよう)
「あの、魔物使いって魔法使える?」
「魔法は使えますよ」
聞かれた老人は柔らかく笑みを浮かべながらそう答える。
「教えてくれてありがとう!!」
「どういたしまして」
魔法を使えると分かった御華は魔法力にもポイントを割り振った。
(よし!これですぐにでも魔法を使えるぞ!!次は魔法防御力?要るかな?う~~ん……少しだけでも割り振った方が良いかな?……うん、少しだけ割り振ろう。よし、次は速さ。速さはあった方が良いから、割り振って……)
「うん!完成した!」
「拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」
もっとも重要と言える設定を早く終らせた事に一抹の不安を抱いた老人は御華に伺いを立てた。
「良いよ!」
「ありがとうございます。では、拝見します」
許可が出た老人は手元に画面を出して見て行く。
※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇
STR 25
VIT 14
INT 25
MND 6
AGI 30
ポイント0
※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇※◇
「拝見させていただきありがとうございました」
見終わった老人は画面を消し、御華にお礼を言った。
「大丈夫だよ!それよりどうだった?!」
御華は首を横に振るって気にしないでと言うと、老人に感想を求めた。
「そうですね……前線で大暴れしそうですね」
能力値を見た老人は後々、防御を捨てた攻撃に特化するのを理解していた為にその言葉がスルッと出てくる。
「前線で大暴れしそう……!カッコ良い響き!よ~し!大暴れ出来るように頑張るぞーー!!」
心がくすぐられた御華は、気になること全て忘れてその目標に向かい頑張る事にした。
「頑張ってください。話を戻しますが、これにて全ての設定が完了しました。ですので、今から最初の街へと転移させていただきます」
「おお~~!!ついに!」
あの時見た、緑豊かな森や綺麗な泉を想起した御華はワクワクした気持ちそのまま大声を上げて喜ぶ。
「今から転移を開始しますが、何かやり残した事等はありますか?」
「う~~ん……あっ!お爺さんの名前!」
聞かれた御華は少し悩んだが、ふと、老人の名前を聞いていないことに気づいてそれを聞いた。
「私の名前ですか?……私の名前はシスイと申します」
「シスイ、シスイ……うん!覚えた!あっ!」
「何かありましたか?」
何かあったのかと思いシスイは御華に聞いた。
「私の名前言って無かったね!私、御華って言うの!」
「これはご丁寧にありがとうございます。御華様」
シスイはお礼を言って深くお辞儀する。
「それは恥ずかしから止めて!」
また頭を下げられた御華は叫ぶように頭を上げるよう促す。
「分かりました」
シスイはこのやり取りが面白かったのか、笑みを浮かべながら頭を上げた。
「もう!バカにしてる!!」
その笑みを見た御華はムスッと頬を膨らませてそっぽ向く。
「バカに等してはいませんよ。ただ、このやり取りが楽しいと思ったのです」
「えっ……そうなの?」
バカにされていると思っていた御華はシスイに聞き返した。
「はい。…御華様、急ですみませんが、お伝えし忘れていた事があります」
他に何かやる事があるっけ?っと思いつつも、御華が聞き返す。
「何?」
「御華様の世界では、身バレなる事があると聞きます。なので、ここに来る転移者様の方達には偽名にする事を推奨しております。御華様にもお伝えしなければならなかった事を忘れていたのは私の不手際です。誠に申し訳ございません」
シスイはそう言うと、深くお辞儀をして顔を上げた。
「良いよ?そこまで気にしなくても」
身バレがどれだけ恐いことか知らない御華はそう言ってしまう。
「これは危険です……身バレの恐ろしさを私がご説明しましょう」
御華の危機意識が低い事に危険だと判断したシスイは短く呟くと、真剣な瞳で御華を見詰めて説明役を買って出た。
「う、うん……お願いします?」
真剣な瞳で言われた御華は、少し竦んでしまう。
「お任せください。まず、身バレとは何の略だと思いますか?」
「確か、え~~っと……身元がバレる事?」
聞かれた御華は前に聞いたうろ覚えの知識を言った。
「正解でございます。では次に、身元がバレるとどんな事が起こる可能性がありますか?」
「どんな事……」
(身元がバレたら何が起こるかな?……住所はバレと思うし、そうなったら変な人が来るかも?そしたらおね……姉さんとママとパパが危険にさらされる…………)
考えて行けば行くほど、身バレの恐ろしさを知った御華は恐怖から体が震える。
「恐ろしさをご理解していただけたようで幸甚です」
「う、ん……」
恐怖から上手く言葉が出てこず、拙くなりながらも御華は返事をした。
「御華様の理解力にお任せしてばかりでご説明できたとは言え無くなってしまいましたが、私からの説明は以上となります。何か質問はございますか?」
「う~~ん……特に無いかな?」
少しの間、質問は何か無いかと考えた御華は特に思い付かなかったので、そのまま言った。
「承知しました。次に移らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「うん!」
「ご了承いただきありがとうございます。早速ですが、御華様にはこの世界での名前を決めていただきたいと思います」
「名前……」
身バレの危険性と推奨する理由を理解した御華だが、どんな名前にするか考えて無かったので、どんな名前にしようかと頭を悩ます。
「う~~ん」
(好きなキャラの名前にしようかな?でも、違和感とかありそう……そのまま本名でやれたら良いけど、身バレがあるから駄目……なら、元の名前から少し変えると、か……?)
深く考えこんでいた御華はふと、自分が思った事に引っ掛かる言葉があった気がして首を傾げる。
(今なんて考えたんだっけ?……確か、元の名前から少し変えるとか?だった筈……!)
御華は大いなる発見をしたかのような興奮に襲われ、心のままに叫ぶ。
「(これだ!!!)」
「何か見つけたのですか?」
伝わってくる感情と言葉からそう判断したシスイは御華に聞いた。
「うん!自分の名前を少し変えたら良いんだって!!」
興奮してる御華は鼻息を荒くしながら、シスイに思い付いたやり方を話した。
「それは良い発見をしましたね」
その様子が微笑ましいシスイはついつい柔らかな笑みを浮かべる。
「うん!!」
褒められた御華は頷くと嬉しそうに笑う。
「こうして笑いあっていたいものですが……御華様。それでどのようなお名前にするつもりですか?」
シスイは寂しそうに小さく呟くと御華に問い掛けた。
「ん~~っとね~~……」
(御華だから、それを逆にしてカミってどうかな?う~~ん……
それだと神様と被っちゃうから止めてこう。でも、それだと入れ替えも1文字減らすのも出来ないから文字をつけるしかない。う~~ん……カミラ?違う…エミラ、も違う……リミカ~はこのゲームの名前と似てるか駄目……ミリカ?…良いかも!これにしよ!!)
名前が決まった御華は叫ぶように言う。
「ミリカで!」
「ミリカですか。良い名前だと思います」
シスイはこの世界の名前として違和感が無いかと考えた後、問題は無いと判断して褒めた。
「ありがとう!!」
頑張って考えた名前を褒められて御華はお礼を言うと嬉しそうに笑う。
「どういたしまして。……御華様、長々と話してしまいましたが、そろそろ行かなければなりません」
「何処に?」
悲しげに言われた言葉の意味が分からなくて御華は首を傾げる。
「転移者様が最初に降り立つ街…クラリアルです」
「クラリアル……」
普段であれば、新しい事に興味や興奮したりする御華だが、楽しく話し合っていたシスイと別れるのだと気づいて、そんな事が考えられない程、落ち込む。
「悲しそうな表情をしないでください。いつかまた、会える時が来ます」
シスイは苦笑をしつつも御華に永遠に合えないわけでは無いと伝える。
「うん……いつか絶対に会おう?」
それは御華にちゃんと伝わり、悲しそうな表情のままだが、瞳には強い決意が宿っていた。
「承知しました。その時を楽しみに待っております。では、転移を開始します」
シスイが御華に返事を返すと、指をパチッ!と鳴らした。すると、御華の足元に不思議な紋様が円のように出現する。
「絶対だからね?」
「はい。……別れる前に一つ差し上げます」
シスイはそう言うと、胸ポケットから一つの懐中時計を取り出すと御華に近づいて渡す。受け取った御華は目の前にある懐中時計を見て、無意識にホッと感嘆の溜め息をついて声を漏らす。
「何これ……綺麗……」
ケースは焦げ茶色とシンプルであるが、中はシンプルとは言えない程、幻想的であった。時を刻む針は金色に輝き、文字盤に文字は無く、その奥に薄っすらと見える景色は空を写し取ったかの如く、美しい青空であった。その景色に太陽は存在しない。だがしかし、雲と空を明るく照らしている。雲はとても白く、青い空を彩るかのように散りばまれていた。
「気に入ってくださったようで恐悦至極でございます」
「うん……うん!ありがとう!!」
とても気に入った御華は懐中時計を両手で掴むと前のめりでシスイにお礼を言った。
「どういたしまして。それはいつか役に立つ時が来ると思いますので、大事にしてくださるとありがたいです」
「そうする!!でも、何処にも入れる所が無い……」
御華は自分の服装を見回すが、ポケットが見つからなくて困った表情で、そう声を漏らす。
「それなら大丈夫ですよ。首元に懐中時計を近付けてください」
「うん?……分かった」
何か意味があるのか分からない御華だが、取り合えずシスイの言葉に従って首元に懐中時計を近付ける。すると、懐中時計に小さな丸が形作られ、そこから焦げ茶色をしたチェーンが御華の首元を一周してまた、丸の元に戻った。
「わっ!……すごぉ~~い!!」
あり得ない現象を目にした御華は驚きの声を上げるが、すぐに瞳をキラキラと輝かせて首元にかかったチェーンを触って興奮する。
「これで無くす心配は無くなりましたね」
「うん!これで絶対に無くならないよ!!ありがとう!!」
シスイの言葉に強く頷いて、御華はもう一度お礼を言った。
「どういたしまして。そろそろ転移しますので、円から出ないようにしてください」
「…………うん」
御華は暫くの間、顔を俯かせつつ懐中時計を触った後、小さく頷く。シスイはその様子を見て、苦笑と微笑ましさが混じった複雑な笑みを浮かべて言う。
「また会えます」
「うん……また会おう」
御華は弱々しく頷くと、顔を上げてシスイの瞳を見詰めると約束を持ち掛けた。
「ええ、またお会いしましょう」
シスイはその約束に頷くと同じ言葉を返す。
「じゃあ、またいつか!!」
御華が手を上に掲げて振りながら言うのと時を同じくして、転移が発動して御華をクラリアルに移動させる。
「いつか会いましょう」
御華が居なくなった空間に、シスイの寂しげな声が響き渡るのだった。
友達ですよ?
それはともかく、ゲームのコンセプトが決まりました。異世界と言う一つの世界に、能力値が確認できる物は入らない!
とうぶんの間、書き直し休ませてもらいます。