何も知らない
作者もミリカも知らない……そんな話です。
「あっ!シラさん、数日休んでも良いですか?」
「どうし……転移者でしたね」
休む理由を聞こうとしたシラだが、そこで調べた情報の中に転移者と言うのがあると思い出してミリカの発言に納得した。
「はい!そろそろ戻らないとおねえ……姉さんを待たせてしまうので戻りたいんです」
「仲かが良いんですね」
姉との仲の良さを褒められたミリカはとっても可愛い笑顔で頷く。
「ありがとうございます!!」
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その後シラと話しあったミリカは宿屋に戻ると、テーブルにランプが置かれており、そこに座っている女将は何かをしているらしいが、入り口からでは見えないミリカは不思議そうに声を掛けた。
「女将さん。ここで何をしているんですか?」
「うん?嬢ちゃんかい。何をしているって言われても些細な事だよ。それより、頭痛は大丈夫かい?」
話を誤魔化されたような感じがするミリカだったが、聞かれた事に答える。
「はい。頭痛は治りました」
ミリカはそう言うと自分の頭を撫でて大丈夫だと示す。
「それは良かったよ。今日はしっかりと休みな」
椅子から立ち上りミリカに近づいた女将は上から下に見回して問題は無いと調べた後、ミリカの頭を軽く撫でながらそう言う。
「は、はい……あっ!女将さん、明日から数日の間、仕事休んでも良いですか?」
撫でられるのが好きなミリカはフニャリと表情が崩れかけたが、そこで伝えないといけないことを思い出して女将に許可を求める。
「ん?あぁ、嬢ちゃんは転移者だったね。すっかり馴染みすぎてて忘れていたよ。それで休む事についてだけど、問題は無いよ」
数日の間、違和感も無く溶け込んでいたミリカが転移者だったと言われるまで思い出せなかった女将はミリカの馴染みっぷりを思い出して苦笑する。
「ありがとうございます!!」
許可がもらえたミリカは嬉しそうにお礼を言う。
「どういたしまして。っとそうだ嬢ちゃん、夕食は食べるかい?」
お礼に返事を返したところで女将は、ミリカが腹が減っていると思いそう問い掛ける。
「はい!いただ……いえ、大丈夫です。戻ったらすぐに食べると思うので」
「そうかい。なら、大丈夫だね。今日はお疲れ様」
「はい!お疲れ様でした!」
女将に帰りの挨拶をして、ミリカは部屋に帰って行く。
「私もそろそろ終わらせないとね……」
ここで帰りを待つ必要が無くなった女将は、ミリカを見送った後にテーブルに置かれた書きかけの紙に最後の一文を付け足す。
『転移者は獣人の可能性あり』
書き終えた後、女将は再度読み直して問題が無い事を確認して封筒にしまう。
「明日は休まないといけないね」
女将はそう言うと同時に紙が入った封筒は何処かに吸い込まれるように消えて行く。




