可笑しい
何故か百合っぽくなってしまった。
追記、明日様に書いた話がほぼほぼおまけになってしまったのでくっつけました。
「はぁ~~。貴女はそれが無ければ優秀な医者なんですが……」
「酷い言い掛りね。そんな事を言うなら私も相応の仕返しをするわよ?」
その呟きが聞き捨てならなかったのか女性は隠し持っている紙をチラつかせながらそう言う。
「…………」
それを見た瞬間、シラの頭は真っ白になったように何も考えれな……いや、考えたくなくてその現実から逃避をしたが、女性がそんな事を許す筈が無く、ワザとらしく紙を背中に引っ込めたり出したりしたが、効果が無いと分かると紙を見せ付ける様に開き始めた。そこで始めてシラは意識を取り戻したらしく、慌てて叫ぶ。
「わ、分かりましたから!それを早く隠してください!」
とても恥ずかしい事でも書かれているのか普段は冷静沈着なシラが顔を真っ赤にしている。
「えぇ~~でもぉ~~私を侮辱したのにぃ~~私だけ何もしないのは可笑しいとお、も、わ、な、い?」
猫なで声でかつ、苛つかせる様に間延びした口調で言って来る女性の言葉にシラは少しだけ……ほんの少しだけ苛つく。
「先程の発言は謝罪します。ですが、人の弱みに付け込む方がよっぽど酷いと思うのですが。その辺り、どう思っていますか?」
「使える物は使う。それが私の信条。貴女に何を言われようがこれは曲げられないわ」
『恥ずべき事は無い』と言わんばかりに堂々と言い張る女性にシラはたじろいでしまう。しかし、それで諦めるシラでは……いや、恥ずかしい過去の自分が書いた手紙を取り戻す機会を逃す筈が無い。
「そうですか……しかし、その紙は回収させていただきます」
シラはそう言うと同時に油断している女性に近づき、手に持っている紙を回収しようとする。
「あら?それだけこの紙が欲しいみたいね?上げても良いわよ。ただし、条件付きだけどね?」
女性は紙を持つ手をさらに高く上げたり、背中に隠したりする等を素早くしながら取り引きを持ち掛けて来た。
「良いでしょう。その条件と言うのを話してください」
いつまで経っても紙が手に入らないと思ったシラは動くのは止めて話に乗る。
「それはね…………貴女手作りのお弁当を毎日、私の為に作って欲しいのよ」
「えっ?」
長い間が置かれた後に言われた言葉はシラにとって予想外だったみたいで間抜けな声を上げた。
「簡単でしょう~~?毎日作るだけでこの紙が手に入る……」
悪魔の囁きの如く。女性はシラにゆっくりと近づきながら優しく語りかけ、最後にシラの耳元に唇を寄せて止めの一言を言う。
「私と貴女、どっちにも得がある取り引き……良いと思わない?」
「い、いえ!わた、し、は……」
真面目に生きてきた分、シラには誘惑等のいわゆるそっち系の耐性が無いだけに頭がクラクラしてしまうか、上手く言葉が紡げない。
「それが嫌だって言うならこの紙を諦める事になるわよ?」
どうしてもシラのお弁当が食べたいのか、女性はシラの目の前で紙をヒラヒラと揺らして煽って来る。それを見たシラは俯き黙ってしまう。女性はそこで己の勝利を確信した。しかし、それは油断だったとすぐさま思い知らされてしまう。
「油断大敵……前に教えた筈です」
「えっ?」
突然、呟かれた言葉に女性は意味が分からず疑問の声を漏らす。
「引っ掛かりましたね」
「あっ……」
今度は少し離れた位置から聞こえた声に女性は顔を向けると、そこには紙を手に持ったシラが立っていた。先程の言葉の意味に気づいた女性はガックリと項垂れてしまう。
「これは回収させていただきました。私を弄んだ罰は、後で貴女に償っていただきますので覚悟しておいてください」
シラはそれだけ言うと、紙を抹消しに向かって行く。
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《その時のミリカ》
塗り薬のお陰で痛みがだいぶ引いたミリカは病床から起き上がると、目の前ではシラと女性との間で火花が散っており、それを見たミリカは状況がまったく分からず困惑げに呟く。
「どうなってるの?」
(えっと、シラさんがお医者さんかな?と言い争い?)
何かを言い合っていたのを困惑しながらも見ていたミリカだったが、また状況が動き出し、今度は素早い紙の取り合いが始まった。
「えっ?えっ?」
(何が起こってるの?戦い?追いかけっこ?)
理解が追い付けないミリカは混乱し続ける。それでも、なんとか状況を理解しようと注視して視てると何か気づいたのかミリカは首を傾げながら心の中で呟く。
(なんとなくだけど、何かを取り合ってる?)
ミリカの言う通り、女性は手に何かを握り、それをシラが必死に奪い取ろうとしている。しかし、それが何かまでは分からないミリカは状況を見続けるしか無い。
(今度は何が起こるの?)
暫く視ていると急に二人は立ち止まり、見つめ合う。それは、終わったと言うよりはいつ動こうかと探りあっている様に見え、それは観ている者にも観ている者にも影響を与えた。
(うぅ~~見ているだけなのにドキドキする……)
ミリカは鼓動が高鳴る胸を両手で押さえながら、二人を見詰める。
(何を話しているんだろう?ここからじゃ聞こえない……)
ボソボソと何かを話しているのには気づいたミリカだが、肝心の内容が聞こえず、気になってしまう。
(近づこうかな?でも、行ったら駄目な気がする……でも、やっぱり気になる……どうすれば良いの~~~~!!)
ミリカが頭を抱えて悩んでいる間にも状況が動き出しているが、ミリカはそれに気づかずに悩み続ける。
(ここはやっぱり近づく!いや、でも、見つかった時に何をされるか分からない……いや、近づくべき!でも、怖い……近づくべきだよ!!近づかない!!近づく!!近づかない!!近づく……)
悩みすぎて、ついには2つの相反する感情が争いだし、永遠と同じ事を言い始めた。それに段々と混乱して来たミリカはフラフラとしだす。
(行く~~行かない~~行く~~行かない~~行く~~行かない~~……)
限界を迎えたのか突然、ミリカはフラフラと頭を回しながら病床に倒れてしまう。それと同時に向こうの決着もついたらしく、女性がガックリと項垂れる。二人が病床と床に落ちた瞬間は、示しあわせていたかのように同じだった。
もう、5ヶ月が経ったのか~~
早いもんですね~~
来月で半年、続いてるかな~~?




