三人の時の始まり
前話と同じ日に書いています。ノリと勢いのまま書いたのでぎりぎり1000文字です。
「ご苦労様。助かったよ」
ミリカを部屋まで運び寝床に横にした後、女将は協力してくれた二人に労いとお礼を言った。
「助かったなら良かった」
「それゃどうも。俺は厨房に戻らせてもらうぜ。時間が迫っているからな」
ユマは素直に感謝を受取り、マヒナは素っ気なく返して部屋を出て行こうとする。
「はぁー……マヒナは素直に受け取らないね」
部屋の扉の外に出たマヒナに雇い主として、また、一緒に働く者として、性格を理解してる女将は呆れの籠った呟きを漏らす。
「仕方ないですよ。素直になるのが恥ずかしいみたいだから」
ユマは女将の言葉に同意しながら独り言に入って来る。
「あんなに素直じゃないと、結婚なんてまだ先になっちまうよ」
この宿屋の中で一番の年長者としてマヒナが一緒独身になるんじゃないかと心配になる。
「それは確かに私も思いますけど、そろそろ準備しないと時間が足りないんじゃないですか?」
「それもそうだね」
ユマに言われて窓の外を見ると太陽が沈み始め、後、数刻もすれば夜が訪れるのが感覚で分かった女将はそう返事を返して部屋を後にする。
「よし!今日も覚悟を決めなきゃね!」
いつも接客業、しかし、昨日ミリカがいたお陰で少しは楽できた時の感覚のままでは今日は乗りきれないと思ったユマは両手で頬を叩いて意識を切り替えてからミリカの部屋を出て行く。
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「今日も張り切ってやるよ!」
宿泊客と食べに来た客が段々と食堂に集り、騒がしくなって来た食堂にある厨房の中で女将は二人に激励を掛けた。
「はい!!」
「分かってる」
二人は対称的な返事を返すが、その瞳と雰囲気にある感情はまったく同じ。これから始まる激務に対して覚悟する。
「まず、ユマ。今日は一人で悪いとは思うが頼むよ」
「大丈夫です!いつもの事だから!」
ユマの返事を聞いた女将は一度頷いた後、マヒナに顔を向ける。
「なら頼むよ!次、マヒナ!様々な料理の注文が来ると思うが間違えないことを一番に!」
「何度も聞いた。言われなくても分かってるよ」
毎回、同じ事を言われ続けているマヒナは呆れのため息を吐いて返事を返した。
「気を付けてもらえれば良いだよ」
「はいはい」
女将が真剣な瞳をして言う言葉には重みがあり、適当な返事を返すマヒナだがその言葉はしっかりと受取り無いようにしようと心の中で決める。マヒナの雰囲気から受取った事を感じ取った女将は何か確認し忘れは無いかと周りを見回して確認した後、一番忙しい時間の始まりを告げる。
「では、始め!」




