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第99回「汗を掻きながらの食事シーンを表現せよ」

______________________________


くまくま17分


 熱い、辛い、旨い。

 ハフハフと息を吐きながら麺を啜る。

 ここは激辛で有名なラーメン店。

 僕はオススメの激辛麻婆餡掛けラーメンを注文した。

 真っ赤なスープや赤みがかったそぼろ餡は見るからに辛そうで、匂いや色味を感じるだけで汗が浮き出る。

 立ち上る激辛臭を吸い込み、口の中を唾液でコーティングしながら一口目、スープを飲む。

 レンゲで掬った湯気の出る熱々な液体にフー、フーと息を吹き掛けながら口の中へと流し込む。

 その瞬間、唐辛子の香気が一気に口内に広がり、ツンとした鮮烈な辛味が鼻の方へと突き抜ける。

 そして、暴力的な辛味が舌を殴り付けた。

 舌が焼け付くとは、正にこの事。唐辛子を軸に、様々な香辛料が絡み合い複層的な辛味を生み出す。

 その直後、辛味に痺れた舌を強烈な旨味が襲う。

 塩味とコク、そして甘味が辛味を引き立て更に仄かな渋味が味を引き締める。

 スープだけでこれだ。麺と、餡掛けと絡み合ったらと思うと、堪らず餡に箸先を突き入れ麺を掴んで口に放り、ズルズルと音を立てて啜った。

 熱さで舌が火傷しそうになる。

 そして、餡掛けラーメンの味が口の中で完成した。

 肉々しいそぼろ餡掛けと激辛スープが絡み付く太いちぢれ麺。先程のスープに加え、別種の辛味で構成された甘酢餡が重層的な旨味を演出、そこに太麺が加わると、隙の無い重厚極まりない旨味の城塞が舌の上に完成した。

 それを味わってしまったらもう、止まらない。

 無言で一心にラーメンを食らい続ける。

 口の中で暴れ回る辛味に身体の芯まで温められて汗が止まらない。

 滝のように流れ出る汗。

 それを拭う暇を惜しんで食べ続けた。


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