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第9回「『移動』『走』を使わずに乗り物での移動を表現せよ」

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くまくま17分


 黒煙のたてがみを靡かせ、いななく汽笛を響かせ線路を駆ける鉄の馬。

 その車窓に流れる田園風景は晴れ渡る秋日に照らされ黄金に輝いていた。

 鉄の馬は馬力を上げ、地平まで広がる金色の草原を力強く駆ける。

 遠い青空に浮かぶ雲の小山。

 それが風に流され、ゆっくりと形を変えるのを眺めながら目的地までの旅を暫しの間だけ楽しむ。


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沙流っぽい何か


 電車に揺られ、今日も俺は会社に赴く。

 見渡すばかりに人ばかり。つり革に捕まっている人は一様にスマホを見て視線を下におろしている。

 ふと、車窓から流れる景色を見てみた。ビルが燦々と立ち並ぶ間に、ちょこんと残る田んぼの侘び寂びが否応なしに諸行無常を訴えてくる。

 定年まであと少し、俺はあと何回同じ電車に乗って会社に行くのだろう?

 終わりが近付いてくるのをゆったりと感じながら、俺は電車の揺れを目を瞑って感じていた…。


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サイドワイズ


 ドラッグマシーンのエンジンが一際唸りを上げると同時に、1台のマシンが過去の存在になる。

 アイツが遅いんじゃない。俺が速すぎるんだ。

 体に伝わる振動が増し、マシンや景色が光の線になる瞬間は最高にハイになれる。

 俺はこの快感から一生逃れられないだろう。

 だがそれこそが俺の人生だ。


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くまくま17分


 トンネルを抜けると、そこは雪国だった。

 かつての田園は白く閉ざされ、鈍色の分厚い雲が空を覆い、紺青に霞む稜線が地平線を塗り潰す。

 窓の外でゆっくりと流れる白濁した静寂な世界。

 列車の震音も、雪に融ける。

 線路脇の電柱だけが、忙しなく過ぎ去って行った。

 音も立てずに。


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