第77回「秋の味覚で飯テロ描写せよ」
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髭虎
松茸ご飯は風味が命だ。
口に入れた瞬間、鼻にまで突き抜けてくる松茸の芳ばしい香り。それこそが炊き込みご飯の味を何段階にも上へ押し上げてくれる。
一度食べれば忘れることはできないあの味と香り。それを今からまた味わえるのだ。否応なく期待に胸が膨らんでいく。
——ピピッ、ピピッ。
炊き上がりとともにモワリと吹き上がる湯気。それを見ただけで頭の中が松茸ご飯一色だ。あぁ早く、早く。
逸る気持ちを抑え、お椀によそい、椅子に座り……しっかりと食欲を焦らしてから、いざ!と箸でホクホクの炊き込みご飯をつかみ上げた。
淡く栗色に色づいたご飯、ここからでも漂ってくる上品な香り。
息を止め、ゆっくりと舌の上に乗せるとやはり。モチモチとしたご飯の感触とともに、有無を言わせず芳ばしい香りが脳を直撃する。
あぁ、イイ。
食べる。食べる。箸が勝手に進む。噛めば噛むほど香りが広がり、そこへ次の一口が合流する。そうなるともう止まらない。
そして気づけば茶碗には米粒ひとつ残っておらず、私はおかわりを求めて炊飯器の前に立つのであった。
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くまくま17分
良く晴れた日。
みんなで掃き集めた落ち葉を山にして火を焚き、その中にアルミ紙に包んださつまいもを入れる。
小寒い秋風が吹き付ける中を焚き火を囲んで暖を取る。
談笑に興じていると、誰かのお腹の虫が鳴いた。
頃合いという事で火鋏を突き刺してさつまいもを取り出すと、焦げたアルミを熱い熱いと言いながら軍手で剥いていく。
中身を出すと、香ばしいお芋の香り。固唾を飲み込み、皮の上からかぶり付く。
熱い。皮を破ると熱気が広がり、口の中を火傷しながらハフハフと、湯気を吐き出し恐る恐る歯を突き立て身を砕いて舌に転がした。
唾液で冷ますと、ホクホクとした食感を楽しみながら食べる。
お芋の仄かな甘味が舌に染み入る。
美味しい。恍惚を浮かべほう、と湯気混じりのため息を吐いた
秋の寒空にあって、内側からぽかぽか温められ、身も心もほぐれていく。
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