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第74回「驚愕という言葉を用いずに驚きを表現せよ」

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隻迅☆ひとみ


 姉の作ったデコ弁の、極みたる貪欲は、生唾を奔らせ愛の恐怖を告げた。


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aka


 8月の夏の終わりごろ。

 俺はまだ大学生だった。

 飲酒はしていなかったんじゃないかと今でははっきりしないが、遅くまで友達の家で宅飲みしたあと、車持ちだった俺が寮まで送ってくことになったんだ。

 交差点にさしかかったときに、べろんべろんになった友達の一人がが左側の窓に目を向けて叫んだ。

「おい、なんだよあいつ!全裸で走ってるぞwははははw」

 ミラーで左後ろを確認すると、ものすごい勢いで全裸の男が車内まで響いてくるような、

「ウオオオオオ」

 みたいな唸り声を上げながら、もうドアのすぐそばまで来ていた。

 人相もはっきり見えるほどで、瞳孔がかっぴらいて、あれは確実に人間じゃなかったと思う。

 だって、あいつは数秒ほどだが、車と並走していた。

 メーターをぱっとみると、60キロと表示されている。

 それに気づいた途端、全身に一気にぞわっとした空気がまとわりついた。

 思いっきりアクセルを踏んで、なんとか振りきることができた。

 あれはなんだったのだろう。

 今でもわからない。

 でも、一番俺のなかでぞっとしているのは、あのミラーで後方を確認し、あの男の陰茎が視界の端に捉えられた瞬間、少しだけ興奮してしまった俺自身だ。


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くまくま17分


 ソイツは、突然現れた。

 弱小の高校バレー部。

 新入生の体験入部でセッターからのトスを打ってもらっていた時、事件は起きた。

 ネットから少し離し気味のオープントス。

 それに対し、音を立ててジャンプしたかと思うと身体全体を弓なりにしならせ、肩を入れ込みながら高速で右腕を振り下ろした。

 風を斬る豪打。

 瞬間、床のボールが爆ぜた。

 轟く爆音に誰もが呆気に取られ、爆心地である地点に目が釘付けになった。

 絶句、からの静寂。

 水を打ったような静けさの中、周囲やスパイクを一顧だにせず、淡々とネットをくぐっていく小柄な少年。

 とんでもないヤツが来た。

 傍観していた部長は喉を鳴らして生唾を飲み込んだ。


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