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第69回「夏に涼を取るための飲食物で飯テロ描写せよ」

______________________________


みりん


 親父さんからカップを受け取ってすぐに勢いよくかきこんだ妹が、突然頭を押さえた。

「キーンとした……」

 照れくさそうに笑ったその口元が青い。

「慌てなくても誰もとりやしないって。お前、舌が真っ青だぞ」

「うざ! だって一年ぶりだし。これが好きなんだもん」

 妹はしゃくしゃくと氷を混ぜてから、今度はゆっくりとストローですくって、ぱくりと頬張った。

「俺にもくれよ」

「やだ」

「けち。誰が買ってやったと思ってんだ」

 妹は人の気も知らないで楽しそうに笑った。勝手なものだ。俺の貴重な小遣いをなんだと思っているんだ。

「花火、もうすぐだぞ」

「待ってよ」

 夏の匂いがした。


______________________________


蒼堆 こなゆき


 夏休み。親は仕事で日中は居ないので、今日の昼は冷やし中華を作った。


 我ながらいい出来だ。インスタントの麺に切った野菜を並べた簡素なものだが、窓の外のこうこうとした光を受けていて少し輝いて見える。


 テーブルに並べたのはよく冷えた麦茶と冷やし中華、そして割り箸のみ。


 冷やし中華にはあらかじめポン酢とマヨネーズをかけておいた。少し異端な組み合わせだが、二つの酸味と麺が合わさっていい感じになるのだ。


「いただきます」

 パキッ


 割り箸を割ると、一気に口内の唾液の量が増えた。

 いよいよだ。


 オレはゴクリと喉を鳴らし、そっと野菜と一緒に麺を箸で持ち上げた。


 数刻の間だが、時が止まっているように感じる。


 部屋のエアコンはずっと前に故障している。部屋の中には扇風機のみ。

 窓からはセミの音が聞こえる。


 汗が頬をそっと流れる。そして、オレは勢いよく冷たい麺をすすった。


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くまくま17分


 熱帯夜。朧月夜の下、夏祭りの会場は煌々と明かりが照らされ、人々は共に笑い合う。

 ブルーハワイのフラッペを注文して手に取った。

 ひんやりと冷たい。

 透明なコップに注がれた青と浮かぶ氷が涼しげだ。

 見てるだけで汗ばんだ顔に一陣の涼風が吹き付けて来るよう。

 堪らずストロー付きの蓋を外し、一気にコップをあおる。

 弾ける炭酸を喉の奥に押し込み、喉を鳴らして飲み干して行く。

 染み渡る冷感たっぷりのドリンクが、身体の熱を奪い去る。鮮烈な気泡と甘酸っぱさが爽やかさを助長し、熱気に湯だった身体に涼風を感じた。


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