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第68回「魅了的な浴衣女子を表現せよ」
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くまくま17分
「お待たせ」
夏祭りの夜。提灯やライトの明かりが届かない待ち合わせ場所に現れた彼女は、青地に白い花弁が散りばめられた浴衣を着ていた。
いつもは長い髪を風に靡かせ颯爽と歩く快活な彼女。
それが、髪を結い上げ簪を挿し、両手でバッグを提げ、下駄をカラコロと鳴らしてしずしずと歩く。
しとやかな仕草は普段とはまるで別人。
初対面の人を前にした時のように、ひどく落ち着かない。
「……どう?」
恥ずかしそうに伏し目がちな彼女。心なしか、頬も上気している。
「か、かわいいよっ」
勇気を振り絞り、手放しで褒め称えた。
ただ、勢い余って声が大きくなった。
何事かと、道行く人がこちらを振り返る。
集まる視線に羞恥を覚え頬を紅潮させていると、彼女は耳まで赤らんでいた。
「………ばか」
紅潮したまま、上目遣いで拗ねたように詰る。
そのいじらしさが、堪らなく愛おしかった。
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