66/151
第66回「嫉妬という言葉を使わずに嫉妬を表現せよ」
______________________________
くまくま17分
二人で廊下を歩く。
先を行く少女は顔に微笑みを浮かべているものの、口角がどこかぎこちない。
少年は恐る恐るそれとなく尋ねた。
「ねえ、怒ってる?」
「何で? そう見える?」
はい、そうです。とは、口が裂けても言えない。
「ごめん、僕が悪かった。だからーー」
機嫌直してよ。ただひたすらに平謝り。こういう場合は男が謝るに限る。
「それは、何に対して?」
「えっと……」
聞き返されて思わず言葉に詰まる。
正直、全く思い当たる節が無い。
おかしい、さっきまで先輩と三人、楽しく会話してた筈なのに。
「解らないの?」
「……すいません」
上目遣いで尋ねて来る彼女に僕は目を逸らした。
「まあ、しょうがないよ。解らないなら」
ため息を吐きながら踵を返し、再び歩き出す少女。
どうしよう。途方に暮れながら、その背中を眺めていた。
______________________________