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第64回「『憂鬱』という言葉を使わずに憂鬱を表現せよ」
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髭虎
涼やかに。
風が吹き抜ける。
ふわりと肌をくすぐる淡い感触。
木霊する、静寂の匂い。
あぁ、このままいなくなってしまえたら。
それはどんなにいいことか。
誰もいない路地裏にポツリ、小さなため息がこぼれ落ちた。
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くまくま17分
桜花舞い散る春。
麗らかな日差しが照らす青空とは裏腹に、少年の顔は曇っていた。
「はあ………」
暗く沈んだ声で、ため息を漏らす。
今日は一体、どんな顔で会えば良いのか?
全く想像が付かない。
正直に言えば、今日はこのまま踵を返して帰りたい。
「会いたくないなぁ……」
気落ちしたその足取りは鈍く、亀の様相だった。
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