第62回「この画像を元に情景描写しなさい」(画像は前書きにて)
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宇佐美ゆーすけ
「着いた、着いたぞ」
上を見上げれば都会と違い、デカい建物が邪魔をすることなく、広々と大きな空が見えた。
もちろん元々空はデカいのだが、あっちではそれすら認識する時間も無かった。
「楽園だ……!」
先日雨が降ったばかりなのだろうか。
一応駐車場と名がついた下を見れば、ぬかるんだ土に車輪の跡が無数にあり、通路には轍が成っていた。
土から草が生えた光景を見たのは、学校のグラウンド以来であろう。
「有給……最高だ!」
「モー」
前から牛の声が聞こえた。
さすが牧場。
1匹2匹ではない。
新品のブーツである事も気にせず足跡を残しながら近づくと、無限に広がる芝生がそこにはあった。
吸い込んだ空気と共に自然の香りが取り込まれ、吐き出した息と共に日々の疲れが抜けていった。
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くまくま17分
よく晴れた空。
地平の果てまで視界に広がる緑。
常磐色の木々を背に、草を食む牛、牛、牛。牛の群れ。
作業の手を止め少しの間、牛舎の窓から見える景色を眺める。
「ああ、癒される……」
広大な放牧地で悠々と過ごす牛たち。
長閑な北海道の原風景。
この景色に憧れて東京からやって来た。
「って、ん?」
微かな違和感を覚え、窓から身を乗り出してじっと目を凝らす。
そして、違和感の正体が解った。
一頭、牛が柵の外で草を食んでいた。
「ちょっ 社長、牛が逃げてますよ?」
牛舎内で別の仕事をしていた雇い主に報告。すると、
「なんもなんも。草食ってんなら、どっか遠くに逃げたりしないわ」
黒く日に焼けた壮年の農夫は朗らかに笑って流す。
そういうものなのか。
釈然としないが、まともに取り合ってくれそうに無いので引き下がる。
このおおらかさ。
いかにも、ザ・北海道って感じだ。
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