第61回「真夏の水着女子を描写せよ」
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宇佐美ゆーすけ
みかん。白桃。グレープフルーツ。さくらんぼ。
市民プールのアルバイト、七日目。
ラクそうだからという志望動機で応募した自分を呪いたい。
イスに座ってぼーっと眺め、ドリンク片手にあくびを1つ。
陽気なオーラと元気な声は、よく見りゃ知り合い、見ぬフリ見ぬフリ。
たまに見かけるやんちゃな子供。ロープを掴んで暴れる暴れる。
それに集うは同じく子供。
キャッキャとはしゃげば、ピッピと笛吹き。
こんな仕事にやるこたぁナイナイ。
いまできるのはこれしかナイ。
そーれ、みかん、白桃、スイカ、メロン。
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くまくま17分
燦々と輝く真夏の太陽。
殺人光線をガンガン地表に突き刺す。
涼を取るため、やって来たプールサイド。
貧相な身体付きの僕はブーメランな水着を着る勇気もなく、平凡な海パン姿で連れを待つ。
そこへ、
「ゴメンゴメン、待った~?」
小走りで豊満な胸元を揺らしながら近付いて来る少女。
程よく引き締まった身体に纏う真紅の水着は色素の薄い肌に良く映えた。
笑顔を弾けさせ、高々と挙げた手を振っていた。
暫し、その天真爛漫な姿に目が釘付けになる。
そして、そのまま通りすぎ待ち合わせしていたであろう、青年の腕に抱き付いた。
うん、知ってた。
だって、僕が待ち合わせしてたのは、
「にーに、待った?」
小学生低学年の弟なのだから。
「よし、行こうか」
「うんっ」
差し出した手に瞳を輝かせる弟。かわいい。
「あれ? 加藤くん?」
振り返ると、そこには純白の水着姿の少女。
豊満な胸元に華奢な肢体のギャップが堪らない。
クラスメイトの川上さんが不思議そうな顔で首を傾げていた。
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水上 ハヅキ
家で水着を着てきた俺はファスナーを上下に動かしながら他3人の着替えを待っている。
「ふふ、だーれだ」
突然、視界が暗くなった。それと同時に背中に何か柔らかいものが当たるのを感じる。
「えっ、えっと、先輩ですか」
「ご名答」
手が離れ、視界が開けた。後ろを振り返ると先輩とリンネが水着姿で立っている。
先輩は自分の髪の色と同じ、赤色のビキニを身に纏っていた。水着の赤色は先輩の持つ活動的な雰囲気をさらに引き立てている。また、ビキニによって先輩の豊満な胸や体のラインを悪戯に見せつけてきていた。
一方、リンネはスクール水着と呼ばれるものを着ている。スクール水着とリンネ自身の背の低さが合わさり、小学女子のような健康さを醸し出している。また、スクール水着の黒とリンネの髪の毛と狐耳の金色が見事なハイライトを描いており、リンネの存在が神々しく見えてくる。
「ってこれ、なんですか」
「これって?」
リンネの水着の真ん中には大きな字で『6-2 トウコ』と書かれていた。
「ああ、それね。リンちゃんの分、買いに行くのも面倒だったから『私のお下がりでいっか』ってなった」
「いやいや……。そんな雑でいいんですか」
「まあ、いいじゃない。別に似合っていないわけじゃないんだし」
「確かに健康そうに見えますし、周囲よりかわいいとは思いますが」
「へぇ、そんなに嘗め回すようにリンちゃんを見てたの」
蔑むような目で見てくる。
「えっ、いや。そう言うわけじゃ……」
そう言った面が少なからずあった為、大きくは否定できなかった。しかし、少し後になって気付く『この先輩、カマかけてきた』と。
また、先輩に気を取られ過ぎてリンネの様子がおかしいことに気付くのが遅れた。
「この頃のご主人様、酷いのです。私がお風呂に入っているときに入ってきたり、着替え中に入ってきたりするのです」
先輩の言うことを真に受けたリンネが俺が寝ぼけているときにやらかした失態をばらしていた。
「へぇ、そうなんだ」
先輩はニヤリと笑い、こちらを見ている。
「ごめんなさい。ちょっと、水着探すのに手間取って、遅れてしまったわ。……ってどうしたの」
体育座りをしている俺に対して秋本が声を掛けてくる。
「いや、別に……。ただ、先輩にまた一つ弱みを握られて、社会的死が近くなっただけ」
秋本の方を向くと白いワンピースタイプの水着を着ていた。太陽光のお陰か秋本の黒髪と水着が光輝いて見える。秋本の水着から立ち込める雰囲気と丁寧な口調が相まって天使のように見えた。
「そう……。早く行きましょう。白石先輩も待っていると思うし」
「そうだな」
俺はこの時、実感した。安易に水着の感想は言ってはいけないと。
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