第43回「愛くるしいペットを表現せよ」
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髭虎
目覚ましの音。目を開けば窓からの日差しが視界を白く染め上げる。
朝が来た。のそりとベッドから体を起こし、ふと横を見ると、同じようにのそりと起き上がった茶色い毛球がいた。
「ふぁ……おはよう、ぞりけんさん」
そう話しかけても、聞こえているんだか、いないんだか。
全身をモコモコに包まれたカピバラのようなその生き物は、起き上がったままとぼけた顔で固まっている。
あれは、また立ったまま寝てるな?
いまだによく分からない生態をした生き物だ。とりあえず、あの子が完全に寝てしまわないうちに、さっさと朝ごはんをやることにしよう。
私は極力足音を立てないようにキッチンに向かい、冷蔵庫からセロリを取り出すと、“ぞりけんさん”と名付けたその生物の元に駆け寄った。
「ほら、朝ごはんだぞ〜」
セロリを口元に差し出すと、眠そうな顔のままカリカリ、カリカリとまるでウサギのように少しづつ食べ進めていく。
うわー、それにしてもすんごいとぼけた顔してるなぁ。
ほっぺたを少し突いてみると、迷惑そうに鼻先にシワが寄った。かわいい。
品種どころか何という生き物なのかすら分からないけれど、もはやそれは私の朝の癒しになってしまっていた。
これで散歩に連れてくと、やけに偉そうに先導するんだよなぁ。ふてぶてしいやつめ。
こうして私は今日も、バイトの遅刻ギリギリまでぞりけんさんと戯れるのであった。
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くまくま17分
部屋の中、絨毯の上にクッションを敷きうつ伏せに寝転がりながら両手を広げ、
「ほら、おいで~」
その呼び声につられてやって来るのは白黒の子猫。
黒く細長い尻尾をピンと立て、小さな足をトテトテと可愛いらしく動かし、脇目も振らずに歩み寄る。
なんて健気が姿だろう。思わずなまじりと頬が緩む。
手元まで来ると鼻をヒクつかせ、興味津々といった感じで忙しなく指の匂いを嗅いでいた。
「よしよし♪」
子猫の喉元をくすぐってやると気持ち良さそうに首を伸ばし、ゴロゴロと甘えた声を発する。
不意に止めると、せがむように指に頭を擦り付けて来る。
ああ、猫は良い。
本当に癒しだ。心からそう思う。
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