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第41回「『痛』という字を使わずに痛みを表現せよ」

______________________________


髭虎


 不注意だった。

 机の足に小指をぶつけてしまう。瞬間、メキッという感触が小指の骨を伝導した。


「あ──ぃ、ぎぃぃいいいいー!! ?」


 たまらず足を抱えて倒れ込む。ゴロゴロ、ジタバタと床を転がりながら。よく見ると半ばまで剥がれた爪が上を向いて立っている。


 あ、これアカンやつや。


 反射的に患部を抑えようとして、震えた指がめくれた爪と強く擦れる。ゾリっと。


「あ────」


 直後、目蓋の裏で光が弾けた。

 脳が認識するまで数瞬、思わず息を飲む。


 そして。


 私はその日一番の絶叫をご近所中に響き渡らせたのだった。


______________________________


くまくま17分


 武士は何故、腹を切らねばならないのか?

 それは、譲れぬ一分があるから。

 切腹とは、処刑に非ず。

 汚名をそそぎ、有終の美を飾る為の名誉。

 己の魂が清廉潔白であると証明する為に今、腹をかっ捌き開帳する。

「ーー、………っ」

 刺し込んだ白刃、脈打つ血潮がみちみちと腸を引き裂く度、激しい衝撃が肚から全身に迸り、今すぐ地に転がってのたうち回りたくなる衝動に駆られる。

 だが、唇を歯形が刻み血が滴る程にまで噛み締めて耐える。

 さあ、笑え!

 栄誉ある最期を苦悶にしかめる道理無し。

 笑顔で飾ってこそ、本懐。

 口角を限界まで吊り上げ、凄絶な笑みを浮かべ、

「いざっ!」

 合図で振り下ろされる一刀。

 (ああーーー)

 首がはねられ空中に舞うともう、男は何も感じなくなっていた。


______________________________

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