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第40回「美少女が春風に吹かれている情景を描写せよ」

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髭虎


 花の匂い。柔らかな風が鼻先をかすめる。

 季節は桜の芽吹く頃。小春日和の公園で匂いに釣られて振り向けば、早咲きの桜がポツンとひとつ。その下で同じように少女がひとり。風に髪が揺れていた。

 

 白い髪に白い肌。アルビノというやつなのだろうか。茫然とした瞳はどこか儚げで。きっと触れれば散ってしまうだろう。思わず一瞬目を閉じて……そして気づくと少女は消えていた。

 

「たしか、桜は匂いがしないんだったか」

 

 ふと思い出した友人の言葉。誰もいない公園にはふわり、花の匂いが残っていた。


______________________________


くまくま17分


 四月初旬。

 麗らかな日差しが心地好い春晴れの日。

 絢爛に咲き誇る桜並木の回廊を通学路に使う制服姿の少年少女。

 幾重にも折り重なる薄紅色の天幕を仰ぎ見ながら薄桃色の絨毯を二人並んで歩く。


「いやぁ、春ですな~♪」

「うん。そうだね」


 少年はチラリと春の訪れを言祝ぐ少女の横顔を見やる。

 そよ風に揺れる長髪、雪のような薄肌色に整った鼻梁、なまじりを下げくりりと円らな瞳をうっとりと細めながら、風に揺れ花びらを散らす天幕を愛でる。

 その姿に見とれて思わず立ち止まりそうになる。


「ねぇーーー」


 話題を振ろうと口を開いた途端、荒々しい一陣の風が音を立てて枝葉を叩きながら駆け抜ける。

 髪を靡かせた少女は驚愕にその目をいっぱいに広げて眼前に広がる光景を焼き付ける。

 陽光に輝きはらはらと舞い散る花びら。

 桜の木々が枝を揺らし桜吹雪を降らせた。

 二人は足を止め、紅梅色に彩られた景色に魅入る。

 風も収まり薄紅色の天幕が落ち着きを取り戻すと、


「今の、スゴかったねぇっ♪」

「う、うん。スゴかった」


 少女が興奮して頬を上気させ桜色に染める。少年はその姿にドキドキし頬を朱に染めながら首肯する。

 二人は通学の事など忘れ、興奮に拳を固く握り締め感動を分かち合った。


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