第34回「『悩』を使わずに悩みを表現せよ」
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ふにげあ
昨日はラーメンを食った、一昨日をはカレーを食べた、今日は何をくおうか
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風間
落ち着け、俺は腹が減っているだけ
腹が減りすぎて、判断力が低下しているんだ
いろいろ目移りしてどれも食べたいが……よし、これだ!
「すみません!」
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髭虎
人生は選択の連続で。
けれど絶対に正しい答えなんてどこにもなくて。
「なぁ、親友」
きっと、何を選んでも後悔だけはするのだろう。
「なぁ、おい……返事くらい、してくれよ…………」
「ぅ゛ぁ……ぁ゛ァ゛ァ…………」
ならばいっそ、最初から後悔するだろう選択をするのもいいかもしれない。
もう言葉も届かない友人が、せめて安らかに眠れるよう。
「あぁ……くそっ、たれが…………」
狂った世界に銃声が二つ。
あぁ、そうだ。俺はその日はじめて自分の手で──“人” を殺したのだ。
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くまくま17分
男は文字の地平を進んでいた。
途切れる事の無い、無数の文字の羅列。それらを踏み越え、ペンを片手に見果てぬ彼方へ突き進む。
そして突如、景色が開けた。
眼前に広がる光景は、無垢なる白。
地平と空が溶けて混ざり合い白濁し、視界が白い闇に閉ざされる。
目も眩む様な純白に平衡感覚は消失し、立っている事さえ覚束ない。
やがてペンも喪失し、意識までもが白く濁っていった。
そして男は、自室のパソコンを前に愕然とする。
「続きが、書けない…………っ」
文字の羅列が途切れた原稿。
それを睨み付けてキーボードに手を翳しても、肝心の言葉は出て来ない。いつもなら心から、泉の様に幾らでも沸き上がって来たのに。枯れてしまった。
それから、その状態を克服しようと映画や音楽を鑑賞したり、漫画や小説を読み耽ったが一向に筆が進まない。
そして、終焉を告げる鐘の音。
この日、この時間に電話を掛けて来るのは一人しか居ない。スマホの画面を見れば案の定。
「ああ………」
男は項垂れ、絶望に打ちひしがれながら呼び掛けに応じた。
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