第28回「効果音の『キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン』から想起される情景を描写せよ(剣劇とは言っていない)」
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ふにげあ
頭が、痛い。ズキズキと内側で零度が生み出す棘の玉が暴れまわっている。
だが、この痛みはまだまだ続く――目の前の宇治金時はまだまだある。胃の中に収まった氷の山は、半分にも満たない。
冷えた身体を温める為に湯気立つ緑茶をずずと啜り、どうか痛みが収まりますようにと私は祈った。
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風間
新郎新婦、たっての希望で結婚披露宴ではなく、祝賀パーティーということになった。
乾杯の音頭を取るよう頼まれた俺は、乾杯の音頭を取る。
先日までドイツにいたせいか、ついうっかり、乾杯と日本語でいうつもりが、ドイツ語で言ってしまった
「では、二人の新たな門出と幸福に、プロージット!」
乾杯、という意味であることはなんとなく察してくれたらしい。
周囲からは近くにいる招待客たちと杯をぶつけ合う軽やかな音が響いた。
俺も友人である新郎の方へ近づいていき、新郎の杯と自分に渡された杯をぶつけた。
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くまくま17分
月も星も闇に溶けた漆黒の夜。
口元から全身を黒衣で包む女暗殺者の眼前には、数十人もの屈強な男たちが立ちはだかっていた。
もう逃げられない。観念しろ。
死ね。ヤらせろ。などと口汚く罵倒されるも、女暗殺者は獣の様に身を低くして構える。
そして、一陣の風となって疾駆した。
地を滑る様に走り、男たちの股関へ白打を抉り込む角度で次々と叩き込んで行く。
瞬く間に男たちの後方へ抜ける女暗殺者。
その背後には、膝からくずおれ股関を押さえて余りの激痛に呻き、無様に悶絶する男たち。
振り返ると彼らにゴミを見る様な凍てつく眼差しを向けて、
「他愛も無いな」
冷ややかに吐き捨てた。
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