第26回「あなたが思う病気で昇天する直前に遺す言葉を考えなさい」
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ふにげあ
声を出せぬ、死病であった。
彼は病によって声を奪われた瞬間に死に始め、遂にその死へと辿り着く。
愛しているとも苦しいとも助けてとも口には出せぬ日々――表現する事は出来ても、意思を言葉にできぬ悲痛は、まさに言葉にも出来ぬ程だった。
それが、終わるという安堵――死に至る瞬間、彼の魂よりも先に病が死んだ。
故にこそ、閉ざされていた喉が開き、彼は心からの安堵を口にした。
「助かった……」
彼以外の誰にも理解できぬ、救済への歓喜を唄い、彼は死んだ。
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くまくま17分
「いい人生だった」
人生で最後に残す言葉として、これ以上のものは無い。
自信を持って断言できる。
病でゆっくりと死に行くのは、必ずしも本意ではないが、最早受け入れる他無いだろう。
老いる程の長い人生だった。
その中で多大な財を成した。
伴侶も、子孫にも恵まれた。
成功したが、それ以上に失敗も、後悔も沢山した。
それらを受け入れた上で言う。
「いい人生だった」
たとえこれが末期の言葉となっても、悔いはない。
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中村ケンイチ
プロフィール:32歳女性 弁護士
28歳女性 モデル
46歳男性 空き缶拾い
17歳男性 高校生
59歳男性 食品メーカー
「満たされなかったこと」
・10才のとき他界した母との時間
・誰かに守られること
・誰も褒めてくれない
・高校生活
・過去の愛
「失いたくなかったこと」
・失った両親の命
・仕事に対する情熱
・プライド
・人を信じる心
・正義感
「お世話になった人たちへ」
・会いたいです
・私のことを忘れないでくださいね
・ダメ人間でごめんなさい
・すみませんでした
・心からの感謝
「悲しくて泣いたとき」
・恋人に暴力を振るわれた時
・母親にじゃまだから出てけと言われた
・ホームレスになって初めて路上で寝た
・自分のレベルの低さを感じたとき
・妻が無言で離婚届けを出した時
「愛したものたち」
・形見の指輪
・交際して来た数多くの人たち
・酒、タバコ、昭和のプロレス
・親友
・2人の子ども
「必死にやり続けたこと」
・つらくても笑うこと
・家を買うために小4から働き続けた
・アル中で入院して酒を飲み続けた
・どんな時でも笑顔
・調理師になろうと無報酬でアルバイト
「幸せにしたかった人」
・がんで亡くなった父
・産まなきゃ良かったと言う母
・離婚した妻
・飼ってる犬
・探し中
「人生最後の言葉」
・幸せでした
・ママの子どもに生まれてこれてよかった
・少しだけ疲れました
・忘れないでね
・ありがとう
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