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第18回「『朝』という言葉を用いずに朝の訪れを表現せよ」

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十六夜月


 あーたーらしい太陽が登ってきた


 なお、この後私は夜勤があるので寝るのだが太陽が登る時間になぜ俺は寝てるのか?


 これも全部ブラック企業ってやつのせいなんだ、ファッキン!


 とまぁ疲れた眼は体にも限界点らしくもう眠いわけだが……やらねばいけない事があるのだった


「ゴミ出し」という大事な作業を、なんで夜に回収してくんないんすかね?


 あるところじゃ夜回収OKだってとこもあるのに! ファッキンうちの自治区!


 とまぁ、どうせご飯も食べないといけないからゴミと財布をもって私は外に出るのだった。


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沙流っぽい何か


 冷えた空気が肌を刺激する。外で深呼吸をすると澄んだ空気が自分の中に満たされていくのがわかった。

 ふぅ、と白い息を吐いたとき薄暗い視界に暖かな光が差し込んだ。

「日本の、夜明けぜよ……ってな」

 そんな冗談を呟いてから俺はいつもの通学路を歩くのだった


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風間


 布団で熟成された暖かさか抜け出し、床から素足に伝わってくる突き刺すような冷たさを我慢しながら、いそいそとガスヒーターのスイッチを入れ、カーテンを開いた

 とっくに顔を出していた太陽の光に目を細めながら、この地域で定時で流される聞き飽きた音楽に辟易しながら、顔を洗いに行く


 さて今日も一日頑張りますか


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NS


 めくらめっぽうに駆けていた。星を見るいとまもない。自ら放った賽の目をなぞるように、カランカランコロン、カツカツコツ。気付けば歩くので精一杯になっているのだ。地べたの賽をヒョイと拾えば四。なんと冷たく、手に馴染むことか。

「あぁクロムよ!」

 ついに膝をつき、砕けるように咆吼した。そして、ようやく星をみた。鮮やかな星々は私のものではない。悪しき平等、妬ましき煌めき。

 その時、紅い星より紅い稲妻が私を打った。途端に森羅万象を知った気がした。もはや星は無く、あれだけ冷たかった賽も、手のひらで燃えている。パチパチメラメラ、パチパチメラメラ。

 私は立ち上がった。道はもうよく見える。二度とこの賽は投げない。


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くまくま17分


 夜明けの時間で何が好きか?

 その問いに僕なら、東雲の空だと答える。

 ベランダの外。ひんやりとした清澄な外気を頬に受け、クリーム色のカーディガンを羽織りコーヒーを片手に空の色彩に目を向けた。

 綺麗だ。

 そんな言葉が陳腐に思えるくらい空は美しく鮮やかで。

 空の青、雲の白、そして太陽の黄金。

 これらが渾然一体となり織り成す空の芸術。

 今、空は。いや、世界は。

 麗しくも鮮やかに薄紅色に輝く。

 夜明けの寒々しい空が、桃桜の花弁に姿を変え、胸の中がじんわりと温かくなる程に優しい色合いで世界を包み込む。

 いつまでもこの景色の中に居たい。

 そんな憧憬すら抱かせる。

 うっとりと目を細め、恍惚に浸って居ると後ろからカラカラと窓の開く音がした。

「メシ」

 振り向くと寝間着姿の彼女が眠気に目を細めながらボソリと呟き、腹の虫を鳴らしたかと思えば外気の寒さに当てられ身震いした。

 男のようにガサツで、飾り気のない明け透けな物言い。

 その力の抜けた自然体が、今ではとても愛おしくて。

「わかった。すぐ準備する」

 口元を綻ばせながら着ていたカーディガンを彼女に羽織らせ、背中を押しながらベランダを後にした。


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