第143回「腹黒そうなイケメンを描写せよ」
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風間
イケメン「まさか。嘘はついてませんよ?」
ヒロイン(てことは、嘘を言ってる部分もあるってことよね?)
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せん
すらりとした体型に白いスーツを纏い、メガネをクイッと持ち上げながらため息をつく。
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髭虎
笑顔が綺麗なやつにロクな人間はいない。それが、私がこれまで生きてきた15年という人生の中で得た教訓だ。
授業終わりの騒がしい教室の中。私は気付かれないようさりげなく、クラスメイトの1人を視界に収める。
本田傑。入学以来、良い噂しか聞かない男子だった。
清潔感のある短めの茶髪。少し垂れた目尻と柔和な雰囲気。
中学から付き合いのある者が言うには、誰も彼が怒ったところを見たことがないのだとか。
高校入学から数ヶ月。クラスメイトとして何度か話をする機会もあったが、聞けば聞くほど、そして接すれば接するほど人格の良さが滲み出ていて、あぁなんとも——
「……胡散くさ」
呟いた。隣の席にも届かないくらいの小さな声で。
私の席から彼がいるところまで数メートル。何人かが彼の元に集まって談笑していて、聞こえるはずのない状況だ。
けれど一瞬、私が言葉をこぼしたその瞬間——薄く細められた彼の瞳が私を見つめていた、気がした。
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インファ
「いつもこの子と仲良くしてくださってありがとうございます」
そう言ってにこやかな表情で彼女の肩に手を置いているのは、彼女の兄だ。
あまり男慣れしていなさそうな彼女に近づいたのは確かに俺からだった。小動物みたいな可愛らしさを持つ彼女を自分のものにできないかとは考えていた。もちろん、他の誰にも言っていない。……はずなのに。
ここ数日、不自然なくらい彼女に会えなかった。普段なら絶対にすれ違うはずの時間になっても、彼女の姿は見えなかった。おかしいとは思っていたんだ。
そんな中、彼女から会いたいと言われて来てみればこれだ。
自分の兄だとはにかむ彼女のすぐ横に立つ男は、彼女と同じく色素が薄く、確かに兄なのだ。彼女の肩にさりげなくかけた手や、年上なのに嫌味のような敬語、そして極めつけはさわやかで人当たりの良さそうな笑みの中で全く笑っていない瞳。
……俺こんなの聞いてないんですけど。
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