第133回「告白という言葉を使わずに告白を表現せよ」
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せん
どうして今日にしたのかと聞かれたら、決心が付いたとしか言い様がない。
焦げるような屋上。生徒の喧噪が響く放課後。オレは一人、アイツの到着を待つ。
家が近所で幼馴染み。学校も一緒でクラスも同じ。
ずっと仲の良い友達、いや家族みたいなもんだと思っていた。
だけれどいつのころからだろうか?
友達に向ける友情でもない、家族に向ける愛情でもない、別のナニカ……。
最初は何となく目で追う程度だった関係の綻びが、今ではアイツを思う度に抑えきれないほど辛く心臓が早鐘を打つにまでなっていた。
汗ばむ手を制服で拭い、固唾を呑む。
念のためスマフォを確認。大丈夫、確かにメッセージは送信されいる。
約束の時間までは、あと2分。
一旦肩の力を抜いて深呼吸。
ダメダメだ。気持ちが前のめりになりすぎている。こんなんじゃ大事な言葉を噛んでします。
少し落ち着こう、と気を取り直した瞬間、1つしかない屋上の出入り口が開いた。
アイツは一瞬でオレを見つけて小走りで近寄ってきた。
たったそれだけのことなのに、吐きそうなくらい緊張してしまう。
「ねぇ用事ってなぁに?」
そういってアイツは微笑んだ。
「好きだ付き合ってくれ!」
「んだよ藪から棒に。俺たち男同士でそりゃないだろ」
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みさとみり
「実は俺、ゲイなんだ」
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くまくま17分
「俺も……ゲイなんだ」
「えっ………?」
言った。
言ってしまった。
だが、アイツの勇気と誠実さに応えるのに、他にどんな言葉があっただろうか?
少なくとも、今の俺にはこの言葉しかない。
「じ。じゃあ、俺とーーー」
「悪いが、お前の気持ちには応えられない」
想い人は、他にいた。
寂寥が滲む俯き顔を見ると、胸が痛んだ。
「それでも。お前の気持ちは、尊重してやりたいって、そう思ってる」
そう答えるのが精一杯で、まともに顔を見てやることができなかった。
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