第13回「『失恋』という言葉を使わずに失恋を表現せよ」
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小鳥遊賢斗
僕は君が好きだった。
過去形にするのは、間違っているかもしれないけど。
だから、僕は君には幸せになって欲しかった。
これも過去形にするのはおかしい。
だけど、どうしても、心の底から湧き上がる痛みを止めることは出来ない。
たとえこんな日が来ても、彼女の幸せを心の底から願うことが出来ると思っていた。
自分の内側で蠢く感情を自分自身ですら理解する事が出来ず、気付けば僕は泣きながら笑っていた。
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沙流っぽい何か
冷たいものが頬を伝う。
そっと触れてみると僕の右手は濡れていた。
ああ、僕は泣いているのか…
心が冷たく、痛く、空虚。
君の幸せそうな顔を見る度にどうしようもなく胸が締め付けられるんだ。
その顔は決して僕の方を向いてはくれない。
後悔しても、すでに流れてしまった時を戻せる訳でもない。
そう、僕は「遅すぎた」んだ…
ねぇ…君は幸せかい?
……そう、かい。
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おおまか良好
寒さに震え、置きだしたベッドに温もりが消えた日から、ガラス越しに見える全て物が、せつゆく歪み歪んでく。
泣きだす町並みは、ただ静かに時を刻み。瞼を閉じると浮かぶ貴女の残滓は、ただ泣いている。
これが雨ならば、その音に気が紛れるのに、振り積もる雪は、ただただ静かで。
その静かな雑音が、この胸を掻き毟る。
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