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第11回「春夏秋冬を使わずに季節の移ろいを表現せよ」

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十六夜月


 いやぁ季節って変わるのが早いもんだね。


 そう思いつつ私は年越しそばの準備をしている。


 この前までは暑い暑いといってアイスクリームとかき氷を作りつつ焼きそばを作っていたのだが……。


 それが終わったと思えば今度は温かいものがほしいときてうちの店には常連以外にもいつも客がいっぱい来ている。嬉しい悲鳴である。


 これがもう年越しそばの準備ってなるんだからもう早いもんだと思うが客がひっきりなしに来ているからそこだけは変わってほしかった。


 ……来年?まぁ客もう少し落ち着いてくれたら店主としては嬉しいんだけどなぁ。


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くまくま17分


 木枯らしの寒風に震える裸木も、降雪の季節には雪のどてらを着込んで寒さを耐え忍ぶ。

 天凍の季節になるときらびやかな氷結のドレスを身に纏い、朝の日差しに輝く。

 雪融けの雨に打たれて潤いを取り戻すと、虫の驟動に合わせて梢に蕾を芽吹かせる。

 やがて新緑の季節を迎えると若葉に彩られ、日に日に青く茂っていく。

 陽光が眩しさを増す頃には瑞々しい青葉のドレスを、

 朝露が輝き滴る季節には、蒼穹に良く映える色とりどりの鮮やかな紅葉のドレスで着飾り、そして霜が地表を白く染める季節になると色褪せた朽ち葉が一つ、また一つと散って木枯らしがまた吹き始める。


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ニトセネ


 麗らかな風の朗らかな笑い声が如く、ピンク色の吹雪は祝福に舞うでしょう。

 賑やかな息吹を聞きながら、暑さに身を焦がしているならば、深緑の笠を貸しましょう。

 お風邪をひいてはいませんか?肌を立たせる風も少しは吹いて、クシャリと足下を見ることもあるでしょう。

 老木だって化粧をします。凍えるなかれ、温々と眠りなさい。夜空の透き通ることこの上ない、繊細な風が吹いています。

 そしてまた、麗らかな風と共に会いましょう。


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髭虎


 冷たい風が枯れ木を揺らす。そこに私の入学を見事に彩ってくれた桜並木の姿はない。日差しから私を隠してくれた緑も、赤く色づく紅葉も、今は遠い昔のように思える。

 震えるような寒さに顔をしかめ、私はマフラーの内側でそっと息を吐き出した。


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小鳥遊賢斗


 子供の頃待ち望んでいた2つの季節があった。

 最初の季節では、無限のように感じる時間がいつの間にか夢幻と化していく。大人になって辛い事があるといつも、小学生の頃友達と遊び回ったり、家族と何度も旅行に行ったその季節を思い出す。けれど大人に近付いていくにつれて、不思議とその面白みは薄まっていった。

 二番目の季節では、誕生日とクリスマスと元旦がほぼ同時に訪れたので、小学生の頃はいつもその季節を楽しみにしていた。中学生になってもその気持ちが忘れられず、何か楽しい事が待っている気がして、いつもこの季節を楽しみにしていたが、楽しい事なんて特に無かったことを記憶している。

 大人になってからは得られないあの頃の眩しさを、僕はこれからも大切にしていければいいなと思う。けれど、大人になるにつれて失っていったものをひしひしと感じ、少しだけ、辛くなる。


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