008 御馳走
ちゃんとした武器に換えると、殺傷力が増した。
前は何回も刺して殴らないと殺せなかったのが、一度で刺し殺せるようになっていた。
盾も出来合いの物ではなく、鍛冶師の知り合いの防具屋を紹介してもらい、格安の皮の盾を買った。
装備の向上と慣れで、ラットを早く沢山狩れるようになると、自然と脇道の奥へと進むことになる。
大通りと比べると薄暗いが、目が慣れると見えないこともなく、問題なくラットを狩れる。
ラットも同時に2、3匹までは戦えるようになっていた。
リックが盾を使い、足止めした所をマイクが横から刺し殺す。
残ったラットを私が網で絡めて、ナイフで刺し殺した。
連携も取れるようになると、効率も良くなり狩れるラットも増えてきた。
1日に魔石が20個取れるようになると、リーリャに2層目で狩る人より稼いでいると褒められた。
まだまだ甘い所はあるが、そろそろ2層目に入る準備をすべきだろう。
2層目で出てくる魔物はスライムである。
粘液体の魔物で、半透明の身体の中に魔石が見える。
動きは鈍く遅いが、近づくと液体を飛ばしてくる。
液体が皮膚に触れると焼き爛れて痛みが長く続き、火傷痕が残る。
目に当たると失明するので、大人しい魔物のわりに被害が大きい危険な魔物だ。
攻撃手段がマイクの短槍しかなく、棍棒だと液体を飛び散らせてしまい、ナイフだと近すぎて危ない。
網も役に立たないので有効な狩り方がないか考えよう。
「よし! 今日はお金を使って御馳走を食べよう!」
ある日マイクが皆にそう言って皆が喜んでいる中。
「マイク、お金は溜まっているけど、使ってしまったら武器が買えなくなるわ。本当にいいの?」
シーナの疑問にマイクはなぜか私の顔を見て伺ってきた。
「武器はこの前替えたばかりだから大丈夫だと思うよ。たまにはお金を使って皆が喜ぶのもいいことじゃない」
「だよな! 英気を養うもの冒険者は大事だ」
「ただし、食材を買って、皆で料理をして食べよう」
本音を言えば、お金は出来るだけ貯めておきたい。
防具もないが、これは私たちの成長を考えて、無駄になりそうで買っていない。
日用品を揃えた方がいいと思うが、稼いで来ているマイクたちが一番望んでいることが御馳走なら、やる気の面でも食事がいいだろう。
ただし、外食より作った方が安く済むから、皆で料理をすることにした。
少ないお金で、市場で端切れ肉と芋類、萎れた野菜と塩とハーブを買う。
いずれも売れ残りの安い食料だ。
皆でわいわいしながら、肉を切って焼いて、芋と野菜と水を鍋にぶち込んで、シーナが塩とハーブで味付けをした。
焼きすぎて焦げた肉や皮の残った芋が入っていたりしたが、味はシーナのおかげかおいしかった。
皆で満腹になるまで食べて、笑って楽しんで満足した御馳走だった。