表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児から始まるinファンタジー  作者: 風風
第4章
76/79

072 風龍ゴズ

 私が意識を失っている間、湖での出来事は大事件となっていた。

 実行犯の魔獣騎士学の生徒は青褪め泣きながら言われてやったんだと白状したが、湖にいた貴族の生徒たちは冗談のつもりだったと言い逃れを始めた。

 数多くの目撃者が悪意に満ちた行い(笑って傍観していた)を見ていたが、貴族の生徒たちにお咎めはなかった。

 それは人数が多かったこと、事件発生後に足早に逃げた生徒もいた為、その場に誰がいたのか正確な所は分からなかったこと。

 被害者の私が奨学生だったこともあって、実行犯の魔獣学の生徒だけが罰せられる形になった。


 私は魔獣の爪による裂傷、魔法を使ったことによる魔力欠乏、氷に叩きつけられた打撲骨折、冷たい水の中にいたことによる体温低下で意識不明の重体だった。

 濡れた体のまま寮に連れて来られて、カレンが懸命に看病をしてくれたそうだ。

 数日は高熱が出て危なかったそうだが、何とか持ち直して命の別状はなかった。

 数日後には目を覚ましたが高熱による意識の混濁で覚えておらず、意識が戻ったのは湖での事件から2週間が過ぎてからだった。


 高熱の間も時折起きていたのだが、いつもカレンか寮母のトゥイルがそばにいて看病をしてくれていた。

 高熱も下がり起き上がれるようになると、やっと彼女たちも安心したようだった。

 裂傷や打撲骨折はカレンが治癒魔法で綺麗に治してくれたが、長期間の寝たきりで体力は落ちてしまった。

 学校の授業も休んで、暫くは療養期間が必要だとカレンに言われてしまった。


 

  

 自室のベットで寝ながら今回の事件を反芻していた。


 私が魔獣の飛行訓練を見ていただけで、魔獣に襲われるとは予想できない。

 こんな事で貴族にけしかけられて襲われては、満足に学生生活を送ることは出来ないだろう。

 一人になったのが悪いかというと私は殆ど一人で行動するため、自由のない生活は御免被る。


 では貴族の生徒が沢山いた氷の湖に近づかなければ良かったか。

 あんな人が沢山いる状況で、犯行に及ぶとは思わなかった。

 

 魔獣に襲われた時、躊躇わず倒せば良かったか。

 倒すのはさすがに魔獣が可哀そうだったが、手傷ぐらいは負わせた方が良かった。


 空中で傷を負わせて放り出されて、最大魔法を使ってしまったこと。

 これが一番良くなかったと思う。

 地上で笑っている貴族の生徒にカチンと切れて、魔法を使って生徒を吹き飛ばし、氷を溶かそうとした。

 しかし、魔力が枯渇したにも関わらず氷は溶けきらず、氷に激突してから割れて水の中に入ってしまった。

 魔力欠乏と氷に激突した衝撃で身体が動かず、泳げなかったことが一番の反省点だ。


 あとの龍との契約はしょうがない事だったと割り切ろう。

 

 しかし実害が出てしまった。

 これは今後、呑気に魔法学校に在籍し続けるのは難しいだろう。

 また命を狙われる可能性もある。

 学校側の対応を見て判断しよう。




 私が寮で療養している間に、学校側は魔獣学の生徒を退学処分にして事件を終結させた。

 貴族の生徒たちにお咎めは無し。私に対する調書や配慮もなかった。

 怪我をしていたから話を聞く時間がなかったと言われそうだが、杜撰な対応だと言えた。


 私は起き上がれるようになると、深夜に寮を抜け出して凍っている湖に向かった。

 暗い深夜の時間帯に湖に行くなんて、また湖に落ちたいのかと思われるから誰にも見つからないように出てきた。

 湖では冷たい風が吹き荒れている。

 湖の前で止まり、凍った湖に魔力を込めた声で話しかけた。


『おい、龍よ。起きているか?』


 すると風が吹き荒れてびゅうびゅうと鳴り響く中、氷の下の水中で蠢くモノが見えた。


「なんじゃ、お主か。早う儂をこの湖から出してくれ。約束を違えるというのなら食らってやるぞ」

『約束は守ろう。しかし龍がなぜこの湖に縛られているのか私に分からない。事情を教えてくれ』


 そう言うと、龍は何故この湖に縛られているのか話した。


 《人食い龍》として恐れられていた風龍ゴズは渓谷に住んでいて、人が通るたびに食べていた。

 しかしある時一人の魔法使いが現れて、風龍ゴズを倒してしまう。

 死にかけたところを風龍ゴズは魔法使いに命乞いをすると、魔法使いは風龍ゴズに幾つかの命令をして命を助けた。

 今後人を食べないこと、魔法使いの指定した湖に移り住んで土地の守護をすること。

 風龍ゴズは了承して、この魔法学校がある湖一帯の守護をするように封じられてしまった。


 しかし風龍ゴズは不満だ。

 人は食べられないし、風もない湖に封じられてしまった。

 長年封じられた魔法も段々と綻び、自由に身体が動くようにもなってきた。

 このまま封印を解いて、再び人を食べて風の吹き荒れる渓谷に帰りたいと思っていた矢先に私が凍った湖に落ちてきたと言うわけだ。


 泉の妖精イェートと似たような話だ。

 きっとこの魔法使いは同一人物だろう。

 妖精イェートは対価を払って泉に来ているが、風龍ゴズは調伏されて湖に連れてこられている。

 イェートは妖精だが、ゴズは精霊よりの魔物のように見える。

 

 風龍ゴズには実体がない。

 魔力を多大に内包した風の塊のような存在で普通の人には見えない。

 だが性質は限りなく悪質で魔物っぽい。

 そこが魔法使いに調伏された理由だろう。


  


 さて私はこの風龍ゴズと湖から解放するという契約を交わしてしまった。

 命が関わる時だったので選択の余地はなかったが、安易に決めていいことではなかった。

 風龍ゴズをこの湖に封じた魔法使いも、この風龍ゴズに土地の守護を任せていた。

 と言うことは私が安易に風龍ゴズを解放してしまうと、土地の守護やダンジョンの守護などもなくなってしまうだろう。

 自由になった風龍ゴズはまた人を襲って、食べて暴れるかもしれない。

 風龍ゴズに対して責任を負ってしまった訳だ。

 このまま魔法学校に在籍し続けるのは難しいだろう。


 風龍ゴズをどうすれば、湖から解放出来るのか。

 解放した後、どう対処するのか。

 難解な問題を抱えてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ