006 ダンジョン1層(1)
それから、3人でダンジョン1層目に行く日々が続いた。
朝早くにダンジョンに入って、ラットを10匹仕留めて、魔石を大銅貨1枚と換金する。
ラット一匹の魔石で銅貨一枚。銅貨10枚で大銅貨1枚に変わった。
お金はシーナに預けて、ダンジョン後に残飯漁りをして食料を確保。鍛冶屋街のガラクタから使えそうな武器を漁る日々を続けている。
これらは私が提案したのだが、年長組はあっさり従ってくれた。
私が言うのもなんだが、5歳児にこんなことを言われて気味が悪くないのだろうか?
まあ、私は助かるのでいいのだが。
年長組はシーナは心配気ではあるものの、案外あっさりと私のダンジョン入りを許してくれたが、年中組はそうもいかない。
私より年上でシーナより年下のディルク、ロジー、メルの三人がついて行きたがった。
幼い私が行けるんだから、俺も行きたい。と主張したのだ。
しかし、私も戦闘で役に立っているのは、網投げぐらいだ。
後は絡まったラットをマイクとリックが殴って刺し殺している。
危なくなったら、後ろに下がってリックを盾にして指示しているだけだ。
網投げができないと無理ということで、三人はマイクによって却下されていた。
今日も、ダンジョンに入ってラットを倒している。
網を使った戦闘では、二人とも上手く突き刺し、殴り倒すことが出来ている。
そろそろ、網を使わず盾を使って、足を使った戦闘に慣れ始めてもいいかもしれない。
脇道での戦闘でも照明の届く明るい場所で戦っているが、夜目に慣れてきたのか暗がりに入ってもラットが見えないということはなくなった。
しかし脇道に逸れるほどラットが増えているようで、複数で襲われたらまだ危険だった。
ゆっくり慣れることと、私の攻撃手段が必要かなと思っている。
ラットを10匹倒してダンジョンを出ようと大通りに戻ると、マイクより年上の15歳ほどの少年たちが2層目に向かって歩いていた。
手足の伸びた痩せた身体に、碌な防具もない貧相な服とさび付いた武器を手に持ち、私たちを見つけると、ふんっと嘲笑しながら通り過ぎて行った。
1層目にいる私たちを揶揄したのだろうが、あの貧相な装備じゃあ、似たり寄ったりだろう。
多くの冒険者が1層目を素通りして2層目へ向かうため、私たちは他の冒険者に邪魔されることなく狩りをすることができた。
ギルドに行くと、いつもリーリャに買取りをお願いする。
年も近いし、私たちに対しても丁寧な対応をしてくれるので安心する。
他の受付係だと、買取額の少ない孤児の子供に対して雑に対応する人もいるのだ。
「はい、魔石10個で大銅貨1枚になります。
毎日、怪我もせずに倒してくるのは偉いですね。無理はせずに討伐をしてください」
「ねえ、1層目の地図ってないの?」
「えぇ? 1層目は2層目までの道が分かりやすいですから地図なんてないですよ」
「じゃあ、脇道の先に何があるのか、誰も知らないの?」
「10層までは1種類しか魔物も出てきませんし、目ぼしい宝箱も5層目まで行かないとないと言われていますから、脇道の先は誰も探していないと思います」
へー、誰も知らないのかぁ……。
出来れば、1層目を網羅して地図を作ってから下に降りたい。
誰もしなかったのかな? こう、冒険魂がくすぐられるのだが。
下に焦って潜っても危険しかないから、安全性の高い1層目で通路を網羅しつつダンジョンに慣れた方がいいと思うんだよね。
ちょっと私の趣味が入っている気がするけど、マイクに提案してみよう。