014 ダンジョン2層目~3層目
1層目のラットを手早く倒し、尻尾を回収すると足早に大通路を通り、2層目へと降りた。
2層目のスライムは動きも鈍く、素材回収も魔石ぐらいで旨味が薄く、被害が大きいので避ける冒険者が多い。
他の冒険者に出会わず、戦闘で倒したスライムの体液をよろず屋から借りたビンに詰めて、必要分の素材が集まれば先を急いだ。
数回の戦闘で盾が若干溶け、マイクが軽度の火傷を負っていた。
私は【マップ】を使って、下の階段を探して先に進んでいる。
人がよく通る道には自ずと足跡や埃、壁の傷跡が残る。
それらと【マップ】を組み合わせて最適な進路を導き、そう時間を掛けずに下への階段を見つけて降りて行った。
3層目の魔物は一角ラビットだった。
飛び跳ねながら突進してきて額の角で刺し貫いてくる。
しかし、倒すと角、毛皮、肉と全てが素材になるので冒険者に人気の階層だ。
冒険者も多くいるので、5歳児の私が見つかれば不信に思われる。
【隠密】とマップを使って、人を避けて進んでいた。
一角ラビットを見つけたのはすぐだった。飛び跳ねる動きにリックが盾を構える。
一直線に突進してきた一角ラビットの角が盾に刺さると、リックはよろけて体勢を崩した。
その隙に一角ラビットに近づき首を刎ねた。
「リック、大丈夫?」
「――っああ、よろけただけだ。怪我はしてない。でも、盾に穴が開いた」
「クソッ、速くて見えなかったぜ」
「でも、突進する前は目で追える。突進するときは一直線だから軌道から避けるのは難しくないよ。
問題は足を止める方法だね。
盾で真正面から受け止めてしまうと穴が開いてしまう。
リックの負担が大きいし盾が耐えられない。
避けて攻撃しようにも速すぎて当たらない。
うーん……、一角ラビットの突進に対して盾を斜めに構えようか。
角が盾に刺さらないように反らして、減速した一角ラビットをマイクか私が仕留める」
素材を採取しながら作戦を立てる。手早く一角ラビットの毛皮を剥ぎ、内臓を取り出して肉を確保すると、再度一角ラビットと対峙する。
飛び跳ねながらこちらに近づき、角を向けて力を溜めると突進してきた。
これをリックは盾を斜めに構えて防いだ。
盾を傷つけながらも横滑りした一角ラビットをマイクが刺し貫いた。
数回戦闘を繰り返すと、盾はボロボロになり使い物にならなくなった。
上手く盾を反らせれば、盾が傷つくこともなかったが、今のリックにはその技術が足りなかった。
盾がなければ、一角ラビットに対抗できない。
疲労も激しいので帰ることにした。
魔石と素材を換金しにギルドに行くと、リーリャはいつも無傷な私たちがボロボロになっているのを見て心配した。
「3層目まで行ったのですか?
…あの、正直お勧めしません。
3層目は素材が取れますから冒険者に人気ですが、一角ラビットの突進を躱して攻撃するか、鉄製の盾で防ぐかしないと一撃で突き殺される冒険者もいます」
「大丈夫だ、倒せている。もう少ししたら慣れるはずだ」
力不足であると指摘されているのだが、マイクは気付かなかった。
帰り道に防具屋に寄って、盾を見せると店主にダメ出しされた。
「これはもう使えないね。スライムで脆くなって一角ラビットで止めを刺された感じだ。
一角ラビットの角は鉄の盾じゃないと防げないな。2300インだが買うか?」
買わないと先に進めない。シーナの薬代も買えなくなったが鉄の盾を買ってリックに装備させた。
一角ラビットの肉を土産に廃屋に帰ると、痛むだろうマイクの火傷を水で冷やして手当てをした。
細かい傷も増えていたが、傷薬を買うお金さえない。
薬類は常備させとくべきだったと痛感している。
シーナの風邪は依然、治らず寝込んでいる。マイクはやはり先に進むことを止めそうになかった。