010 サルタヒコノ神(1)
半透明の子猿が宙に浮いている。
シュールな光景だ。でも、この世界ならあり……なのか?
「何?」
「キキッ、儂の住処を綺麗にしてくれたちびっ子に、このサルタヒコノ神たる俺様から恩恵を与えてやろうッ!」
「恩恵? ていうか何者?」
「キーッ、そんなことも知らないのか。
儂は旅人の神、サルタヒコノ神。天上の楽園ヴァルアセスにおわす神々の一柱。
儂の恩恵はここのダンジョンに潜る者なら重宝するスキル【マップ】だ!」
得意げに喋る子猿は聞き捨てならない事を話した。
知らないことが多かったので色々話を聞く。
この世界には、様々な神が天上の楽園ヴァルアセスという所に存在している。
天上の楽園ヴァルアセスに地上の者は行くことが出来ないが、神は触媒を使って地上に干渉することが出来る。
子猿の触媒は打ち捨てられた石像で、長年放置されていたが私が綺麗にして祈ったことで地上に降りることが出来た。
スキルとは、地上の者が先天的、後天的に持てる技術のこと。
旅人の神、サルタヒコノ神はスキル【マップ】を与えることが出来る。
というものだった。
スキルなんてもの、初めて聞いた。
マイクやリーリャからも聞いたことがなかったから、皆知らないことなのか?
ステータス表示は神に供物をすれば教えてくれる。
供物に出来るような物、持ってないんだよなぁ。
お金もないと、ポケットを探っていたら小粒の魔石がいくつか出てきた。
何かに使えないかとくすねた魔石だが、使い道が分からないままだった。
魔石を見せると子猿は案外喜んだので、石像の前の賽銭箱に投げ入れた。
魔石を賽銭箱に放り投げると、おみくじみたいな紙がひらひらと落ちてきた。
中を覗いて見ると私のステータスが書かれていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:アン
年齢:5
地位:孤児
レベル:3
スキル:俊足1 投擲1 夜目1 マップ1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
すでに【マップ】も書かれていた。
どう使うのか聞くと、道を覚えやすくなるそうだ。横の数字は熟練度を表している。
【俊足】は追いかけっこをしたりダンジョンでラットから逃げ回っていたおかげかな。
その他、ダンジョンでしたことがスキルに反映されている気がする。
……ちょっとワクワクしてしまった。
レベルを上げたくなるのも冒険者魂だよね?
「キッキッキッ、もっと良い供物を持ってきたらサービスしないこともないぞ。
だから、また来いよな」
そう言って子猿は消えて行った。
私はその後、帰りが遅くなってシーナに心配されたけど無事に廃屋に帰った。