001 路地の片隅で
うん? どういうことだ。
意識を取り戻した私は、気が付けば薄暗い路地に一人佇んでいた。
レンガで出来た建物が並ぶ薄暗い路地は人影もなく、いつ自分がここに来たのか覚えていない。
小さな手に裸足の足、ボロボロの服を着ている自分にも違和感があった。
自分はこんな小さな身体だっただろうか?
立ち並ぶ風景も覚えがないものだった。いや、直接的には見たことはないがこんな風景を間接的に見た覚えはあるのだが……。
どうやら自分はおかしな状況に陥っていることに気づいた。
しかし今後、どう行動すればよいか分からない。
途方に暮れながら歩き、路地を抜けると明るい大通りに着いた。
そこには様々な種類の生物が闊歩していた。
彼らは私に似ている人間もいれば獣のような者が服を着ていたり、小さい人や大きい人、見たこともない生物を連れている人もいた。
彼らは一様に鎧や武器を携え、鋭い眼光に剣吞な雰囲気を醸し出していた。
何とも恐ろしい。
彼らに助けを求めても、腰に差した剣で斬られるかもしれないと思うと、声を掛けることは出来なかった。
結局そのまま踵を返して路地に戻り、片隅に座り込んでしまった。
なんだか大変なことになっているなぁ……と他人事みたいに考えながらさっき見た人々を思い返してみる。
私の感覚では、どうにも奇妙だと思う人が多くて困ってしまう。
しかしどうして奇妙だと思うのか、うんうん唸っても思い出すことは出来ない。
私が無い記憶を掘り起こしていると、突然声を掛けられた。
「おい、お前。ひとりか?」
見ると薄汚れた少年が睨みつけるように見ていた。
私がとっさに頷くと。
「ふーん。親はいないのか? 捨てられたのか?」
親がいた記憶はないし、捨てられたかどうかも分からない。
私が首をかしげていると少年は思案気に私を見つめていると、勝手に納得したようで、「一緒について来い」と言うと私の手を取り、歩きだした。
足早に歩く少年を見上げながら小走りでついて行く。
勝手に連れ出している少年に、正直私もこの状況に困っていたので不満はなかった。
薄暗い路地をしばらくして抜けると、塀の一角にあった小さな穴に少年は入っていく。
子供か小動物ぐらいしか通れない穴を潜ると、雑草の生えた空き地と朽ちかけた廃屋が見えた。
ここに数人の孤児の子供たちが暮らしていた。
こうして私は孤児として子供たちと一緒に暮らすことになった。






