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ひも状の光

終業のベルが鳴り、いつもの様に机の中の荷物を鞄に詰め込む。窓際の特等席に座る僕はいつもの様に何気なく窓の外を眺めた。

「雪だ…」

思わず漏れた一言にぼくの前の席に座る長谷 奏佑は無邪気な子供のように、

「まじだ!雪降ってる!」

教室中に響き渡ったその大声は当然みんなに届き、今年初の雪にまいあがっているようだった。

僕も雪が好きだったのでHRの最中は早く外に出たいと焦る気持ちを抑えていた。


「架、帰ろうぜ」

奏佑が僕に言った。奏佑とは小学生の時から6年間同じクラスだった。家も近くお互い知らないことはないと言っても大げさではない。

「おう」

校舎を出るといつもの通学路はうっすらと降り積もった雪のおかげでまるで違う表情を浮かべていた。

「いやー、積もったな」

奏佑は嬉しそうに言った。

「ほんとだな」

と言ってる僕の手は雪を拾い上げ丸く固めると奏佑の背中に投げつけた。

「イタっ」

と言った奏佑もまた雪を拾い上げていた。

高校生になってもやっぱり雪合戦は楽しいと思った。

「今日おまえんち行ってもいいか?」

奏佑はこうして2人で帰ると決まってこう言う

「いいよ」

奏佑は高校に入ってもサッカーを続けている。うちの学校のサッカー部は公立だが練習は厳しく休みはすくない。だから奏佑と一緒に帰れる日は少なく、僕も嬉しかった。

「おまえと帰れるなんて久々だな、寂しかったか?」

「そんなわけないじゃん」

「おまえ、部活もやってないんだから彼女の1人でも作れよ。」

奏佑は毎回こう言う

「いらねーよ」

僕も毎回こう返す

「まだ玲奈ちゃんの事忘れられないのかよ」

「だからもういいんだって」

何度この話をしただろうか奏佑はしつこいところがある。

「ほんと、もったいなかったよなぁ」

「…」

僕は返す言葉がなかった。

「そういうお前はどうなんだよ」

「あー、俺か?俺は今好きな人いるから」

「へー、誰?」

「同じクラスの古森さん」

「へー、ベタだな」

古森ゆり、小柄で明るくて常に笑顔で友達も多い。勉強は苦手なようだが、そのアイドルの様な顔立ちで学校中の人気だった。

「もうあと一ヶ月くらいでクリスマスだから付き合いたいなぁ」

「まあ、応援してるよ」

僕は古森さんのことをあまりよくは思っていなかった。理由は特にないのだけれど彼女は完璧すぎる。と思ったいた。

その後僕の家に着いてから奏佑が帰るまで奏佑は古森さんの魅力を聞かされた。

次の日雪は溶けていた。


12月に入ってしばらくすると定期考査期間に入った。

定期考査期間は部活がないので毎日奏佑は僕の家に来た。その度に奏佑は勉強そっちのけで古森さんの魅力を語っていた。

奏佑は古森さんの連絡先をクラスの女子から聞き毎日メールでやり取りをしているらしい。

そして定期考査1日目を迎えた。僕は勉強は常に中の上だった。奏佑が帰った後はきちんと勉強していたので今回もいつもどおりだと思ったいた。奏佑は勉強をしている所を見たことがないがいつもそこそこの点数を取っている。テストが終わったのでいつものように帰る支度をしていると奏佑がやってきた。

「わるい、今日部活のミーティングあるから先に帰ってて」

僕は

「わかった」

と言って僕は教室を後にした。

階段を降り、下駄箱で靴を履き替えていると

「体育館の裏で待ってます。お時間はかけさせないので来てください」

と書かれた紙が入っていた。

告白かな?と思ったが「お時間はかけさせないので」という言い回しが告白する人が書く人のそれとは思えなかった。なにかの業務連絡だとしても場所がおかしい。僕は行くか迷った。1度よく考えようと思いトイレに向かった。すると

「おお、架まだ帰ってなかったのか」

奏佑だ。

「なんか、俺の下駄箱にこんなのが入っててさ、何かの罠かもしれないから行って大丈夫なものか1度よく考えようと思って」

「罠ってなんだよ、いいから行ってこいよ、こんな可愛い文字書くやつに罠しかけるやつなんかいないよ」と奏佑は笑って言った。

「わかったよ」

僕は行くことにした。僕はこいつが言うことにはあまり逆らわない。

下駄箱で靴を履き替え体育館裏に向かった。そこにいたのは古森さんだった。


「もう、真宮くん遅いよ」

と教室にいるときと変わらない様子で言った。

「ごめん」

僕はボソっと小さい声で言った。

「今日ここに真宮くんをよんだのはね、真宮くんに聞きたいことがあって来てもらったんだ」

「聞きたいこと?」

「うん。」

近くで見るとやっぱり可愛いんだなと思った。

「私ね、見えるんだ」

「見える?」

「うん、私、誰が誰を好きなのか見えるんだよ。」

「超能力?」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないんだけど高校に入ってしばらくしてから比較的若い人間?から明るめの緑色のひも状の光?が見えてなんだろうなーって思ってたら若いカップルとかはその光が繋がってるんだよ。それである日その緑色のひも状の光が友達の光が男の子と繋がってるからその子に、あの男の子と付き合ってる?って聞いたら、なんでわかったの?って驚かれてその後も光がある男の子に向かってる友達にあの子のこと好きなの?って聞いたら顔を真っ赤にしてたから確信に変わったかな。」

この子はなにを言ってるんだろうと思って理解出来なかった。僕がさっき可愛いって思った時は大丈夫だったかしんぱいになった。

「それでなんでそんな話を僕に?」

「うん、真宮くんからはその光が出てないから」

僕は何故光が出てないのかわかるようなわからないような気持ちになった。

「そうなんだ」

「そう、それで気になって、なんでかなって若いのに」

「うーん、俺にもわかんない。でも、その光?は僕以外の人全員から出てるの?」

「ううん、私のパパとママくらいの年代の人からはほとんど見えないかなあ、」

「犬とか猫は見えないの?」

「うん、見えないよ」

世の中にはすごい人がいるんだなと思ったら奏佑のことを思い出した。

「古森さんにむかってる光はたくさんあるんじゃない?人気だって聞くし」

「うーん、だから困っちゃって」と彼女は笑った。

「じゃあ、話は以上かな?結構時間取られたから帰ってもいいよね?」と僕はそっけなく返しその場を立ち去ろうとした。

「待って、最後にもう一つ」

と言って僕の腕を掴んだ。

「なに?」と僕は平静を装った。

「私、自分の光も見えないの」

「だから?」

「私、自分で言うのもアレだけど中学の頃からモテてはいたけどこう、見えるようになっちゃうとどうしていいかわからなくて、困っちゃって、自分からも光が出てたらいいんだけど、私、ちゃんと人を好きになったことないからわからなくて、だから真宮くんに相談にのってほしいの。同じ光の出てない者同士として。」

僕は彼女が向ける真剣な眼差しから目をそらした。

「でも、光を向けてくる人とメールでやりとりしたりしてるんでしょ?」

「ああ、長谷くんの事?好きとかではないけどいい人だし、真宮くんと仲いいみたいだからメールは続けてるけどどうしたらいいのかわからないんだ。」

僕はこのことを奏佑になんて言えばいいのだろうかと迷ったが、奏佑のためには言わない方がいいのだと思った。

「僕にもわからないよ。」





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