自殺の名所の海岸の岸壁で目撃された、得体のしれない者
ある若い女性は、早朝に、自殺の名所である、ある海岸の岩壁に行った。
夜だと怖く、早朝を過ぎると人が来るので、彼女は、その時間を選んだ。
そして、適した場所を見付けようと、下を覗きこんでいると、
遠くてはっきり見えなかったが、
ワンピースのような服を着た人が海に浮いているのが見えた。
自殺するとこうなるのかと怖くなったが、決心は変わらなかった。
しかし、ここから飛び込むと、その死体に直撃する可能性があったので、
場所を少し移動した。
すると、死体だと思ってたものが突然動き出し、付いてきた。
移動しても移動しても付いてきた。
そして、下の様子を見ていると「死んだら後悔するぞ」など叫ぶ声が聞こえた。
彼女は、あれが何なのかわからなかったが、
説教にかこつけて、「心が弱い」「人格障害」などの悪口を言って、
優越感を得ているように見える人達にうんざりしていたので、
そのまま無視することにした。
しかし、それをよく見ると、くねくねと人間でない動きをしていた。
不安が強くなっていったが、さらに誰かに目撃されるとまずいと思い、
思い切って飛び込もうとした。
その瞬間、その手が伸びて、こちらに近づいて来るのが見えた。
その時、彼女は、あの言葉は説教ではないし、あれは地縛霊だと直感した。
そして、逃げようとした時には、すでに体を掴まれ動けなくなってしまった。
とっさに「自殺しないから連れていかないで」と叫んだ。
すると、掴んでいた手は離れ、海へ戻っていった。