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たまモン!元人間の転生日記  作者: 噛み付き熊さん
第一章 なんとかや年、なんとか月何日、晴れ
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4話 暗黒最終進化形態

 帝聖歴二千十五年、熱月十二日、晴れ

 シロンは再び誕生する。

 シロンは再びリリカに出会う。

 そしてその日、シロンは暗黒進化をコンプリートした。


 シロンが意識を取り戻したのは薄暗い暗闇の中だった。


(ああ、俺また死んだのか……なんか呆気なかったな二度目はこんな物か、そしてここは卵の中か?)


 辺りを注意深く確認してみると微かに揺れている、そして温かい。


(誰かが卵を抱えてるのか? それにしてもこの感じは……紗奈か?)


 シロンは直感で何となくそう思った、生き別れ……いや死に別れになった妹だがこんな姿になっても妹は妹だ分かるものなんだなとシロンは思った。

 揺れはしばらくすると止まった、そして複数人の話し声。

 紗奈、杏、翔、寺田……そしてリリカだ。


(こいつらリリカに用があったのか……一度死んで頭も冷えたとは言え正直顔を合わせづらいな)


 などとシロンは考えていたがそうも行かなかった。


「あの、賢者様……賢者様はモンスターの研究をなさっているのですよね? これは先ほど倒したモンスターが卵になったんですが」


 紗奈はリリカにシロンの卵を渡す。何も知らないリリカは大はしゃぎで卵を受け取った。


「うわ、こんなの見たことないよ、凄い! 凄い!」


 リリカが触れた事によって卵の中のシロンに魔力が流れる。


「卵にヒビが!」


 はしゃいでいてリリカは気づかなかったが、紗奈の一言に卵の状態を確認しようと地面においた瞬間――――。


(今だッ!)


 シロンは卵をぶち破り、一気に飛び出し、寺田を視認した。


「えっ? シロン!」


 卵から現れたシロンに驚いたリリカは目をゴシゴシと擦ってもう一度よく見てみたが――――シロンは既に暗黒進化を遂げていた。

 漆黒の翼に赤いラインが血管の如き模様をしている大鷲、ヘルベルグに進化していたのだ。

 シロンの狙いは勿論寺田のみだ。他の人間には目もくれず一直線に滑空していくが、その前に翔が立ちはだかる。


「イージスッ!」


 シロンと翔の間に光り輝く黄金の盾……と言ってもそれは魔法のようで若干透けていた。

 シロンは構わず突っ込むが黄金の盾はその突進を阻み、更に真上へ弾き飛ばす。そこに透かさず寺田が跳躍して縦に一閃、シロンを切り殺してしまう。

 薄れゆく意識の中、シロンは寺田を見る……憎い、殺してやりたいでも足りない、もっと、もっと力を……シロンは求めていた。

 そしてリリカが倒れた、胸を抑えて苦しそうにして――――シロンが無理やり魔力を引き出し始めていた。

 漆黒の獅子へと進化したシロンは再び寺田と翔、杏に挑む、その間に紗奈はリリカに治癒魔法をかけている。

 だがどれだけ姿を変えてもシロンは寺田達に届かない、死んですぐさま進化して復活を繰り返す。紗奈が常にリリカに行っている治癒魔法の効果が契約を通してシロンに流れているからだ。


「チッ雑魚が往生際の悪いこって!」


 次々に姿を変えていくシロンにめんどくさそうに剣を振り続ける寺田。既に翔と杏は戦闘に参加していない。

 紗奈の近くにいて彼女を励ましている。リリカも紗奈の治癒魔法によって苦しみはしていないものの未だにシロンに魔力を吸われ続けていた。


 寺田は息を飲んだ、今目の前にいるのは圧倒的な『死』とも言える存在、離れたところにいる翔達ですら震えて身動きがとれない。

 三メートルを超える漆黒の巨躯に黄金の紋様、翼に尻尾、角に牙、爪、あらゆる面に置いて人間などというちっぽけな存在が太刀打ちできる相手ではないのは明白だ。

 魔神竜『デスヴルム』暗黒最終進化形態にして、バグとすら言われたチートモンスターだ。

 対戦で一度も勝てない人に対する救済措置として作られたモンスターだったのだが、その規格外の強さでたまモンの衰退を招いた原因の一つでもある。

 シロンは寺田を見下していた、こんなやつに何度も殺されたのかと。この程度の男にいじめられていたのかと思うと無性に腹が立つ。


「テェラダ……ヨクモ、コロシテクレタナ……ヨクモ、ササカリョージヲコロシタナ」

「ひぃぃ、ごめんなさい、ごめ、ごめんなさい俺がやりました、俺が佐坂を殺しました、認めるから許して……」


 土下座しながらブルブル震える寺田のあまりの小物な発言にシロンは絶句した。


「寺田先輩なんですか……? お兄ちゃんを殺したのは?」


 紗奈は信じられないものを見たような顔をしている、翔と杏も口を抑えて憎悪を込めて寺田を睨む。


「ユルスワケガナイダロ……オレガ……ササカリョウジ……ダ」


 その一言に寺田は恐怖と驚愕を併せ持った顔を上げた――――その瞬間寺田は宙を舞い、遠く彼方へと吹き飛んだ。シロンが右手を振り払い寺田に叩きつけたのだ。

 しかしシロンには寺田を殺した感触はなかった、何かに阻まれ寺田を遠くに逃がす結果になってしまった。


「お兄ちゃんなの?」


 紗奈の声に振り返り、シロンは小さく頷いた。紗奈は泣きながらシロンの足に抱きつく。


「サ……ナ……」


 シロンの意識は突如として途切れた、リリカの魔力がそこを尽きたのだ、シロンは今の体を維持できずに卵へと戻ってしまった。

 残されたのは一人の少年と二人の少女、そして昏睡した賢者に白い卵だけだった。


リムジン! ああいや理不尽か、寺田君には早々に退場してもらったよ。

彼が今後出てくる可能性は残したが、あんなやつは二度と来るなと作者は思いました。

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