3話 二度目の死
久しぶりな上に他の事しながら書いたので誤字とか文章がおかしかったら教えてください。
帝聖歴二千十五年、熱月十一日、曇りのち雨
シロンは森の中を走り続けた。
シロンは冒険者に出会い、死亡した。
シロンは走り続ける、ただ闇雲にリリカから逃げるために。
どれだけ走ってきたか分からない、ここがどこかも分からないと言った所でシロンは立ち止まった。
(人の気配がする……それもどんどん近づいている!)
リリカではない、それだけは分かる――――明らかな殺意を感じたシロンは咄嗟に身構えた。
草むらから四人の男女が飛び出してきた。
10代の少年少女だ――――シロンはその少年少女を知っていた。
(あいつは! ……あいつだけは!)
そのうち一人の少年を見たシロンは激しい怒りに囚われた。
(体が熱い……グッ……)
シロンの体が変化を始める、先ほどまでと違い体毛は黒く濃くなり、体はどんどんと成長していく手足は長く、尾は太く強靭に、爪と牙は鋭さを増し――――シロンは漆黒の狼のような化物に進化した。
たまモンにはいくつかの暗黒進化というものがあり――――これがその一つヘルガルム、進化条件は一度殺された相手との再戦である。
たまモンの機能には通信対戦があるのだが、この通信対戦は敗者は死んで卵に戻るというデスペナルティが存在する。
そしてその後もう一度同じ相手と再戦すると戦闘開始前に進化が可能になる。
つまり、この少年が前世で人間だった頃の自分を殺した張本人であるとシロンは理解した。
(どうしてここにこいつが! でも俺がヘルガルムになったということは間違いない……寺田……お前が犯人か!)
今目の前にいる少年少女、男二人女二人、それぞれの素性をシロンは知っていた。
男の一人は親友と呼べる幼馴染の南條翔、それといじめっ子の寺田。
女はもう一人の幼馴染の城島杏、それから妹の紗奈だ。
(なんでこいつらが、しかし殺るしかない……寺田だけはここで!)
シロンはその場で荒々しく遠吠えをしてから寺田目掛けて飛びかかった、寺田な何やら剣のような武装をしているが――――シロンは真横から強い衝撃を受け弾き飛ばされた。
(翔……お前が、いや俺がこんな姿だからか……)
シロンは自分の姿を認識した、凶悪な化物だ……そして彼らは武器を持っている、何らかの理由で戦う為にここにいるのだろう。
(勝てない、いや勝っちゃいけない……寺田は憎いが他の三人には攻撃は出来ない……ここは逃げるか?)
そうシロンが悩んでいた隙に。
「隙ありぃ!」
「グッガッ……」
寺田の持っていた剣がシロンを貫いていた。
(これで二度目……またお前か……必ず、必ずお前を殺してや――――)
シロンの意識はそこで途絶えた、後に残ったのは白い卵のみ。
「はぁ、はぁ……やったぞ、面倒かけやがってこの犬っころが!」
寺田は乱暴に卵に蹴りを入れた。
「強敵だったね、こんなところにこんなのがいるとは聞いてなかったけど、これも魔王の影響なのかな?」
翔は寺田の蹴り飛ばした卵を見ながら物思いにふける。
「この卵どうするの?」
紗奈が卵についた土を払いつつ大事そうに持ち上げた、卵は異常なまでに軽く少女の細腕でも軽々と持てるようだった。
「賢者様へのお見上げにしたらどうかな? 王様が賢者様は珍しい魔物とかを収集しているって言ってたじゃない」
杏が卵を優しく撫でながら提案する。
「そりゃいいな、そしたら賢者とか言うのもさっさと俺の仲間になってくれる訳だ! それじゃあ、さっさと行こうぜ!」
寺田が先頭を歩き、三人はそれに従うようについて行った、目指すは大魔道士にして稀代の賢者と呼ばれるリリカ・セレスウィンの住む研究所だった。




