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Station  作者: ロンパン
2/2

星の国に怪盗

 蒸気機関車が走る中蓄音機より鮮明でかつ楽しげな音が彼の耳元から漏れていた。


 「兄さん、漏れていますよ。」

 「っと」


 気付いた彼はポチポチとボタンをいじり音量を下げる。

 産業革命がおきてもなおこの世界で恐れられかつ特権階級に属している「吸血鬼」の姿がそこにあった彼らは人間の身体能力をはるかに超えまた知能も賢い傾向ではある。


 故に貴族や国政を仕切る場では彼らの方が圧倒的に多い反面、デメリットも多く太陽光(紫外線)に大して異常に弱いことに加えて、出生率もかなり低い。


 人間はよく吸血鬼のことに関して勘違いをしているが、血を吸ったから下僕になったりまた処女の者はといった設定はうそっぱりである。合っているところと言えば魔法を扱える部分だけだ。


 「エムピースリー再生機って機械は本当にすごいな。」

 「人間は魔術や魔法人の組み方は苦手だけどこういうのには長けているね。」


 今彼らが乗っている蒸気機関車にしろ最近の人間は機械を開発し、尋常ではない量産体制に入っている正に産業の革命が現在進行形で行われていた。魔術による武器の大量生成は行えるがそれも個人差があり薪や石炭を燃やせば得られるだけの蒸気機関とメリットの差は歴然としていた。

 しかしそれだけだとこの車両にいる二人は考えていた、あの廃線に乗るまで。


 「向こうで本田って人に教えてもらって蓄音機を作ってみたんだけど、やっぱり雑音が酷い、まだ魔術で保存した方がいいや。」

 「ああ、今の所はな。」

 

 彼らの外見は瓜二つで双子だった、ただどういうわけか眼の色だけは違う。兄のレオンは真紅の目をしており弟は真逆の碧眼だった。


 髪はつややかな黒で顔は童顔だ、弟はメガネをかけているが視力補正の為ではなく色々な機能を兼備えた多機能のメガネで、吸血鬼には感知できない何かも察知することができるようにしている。

 無論これは例の廃線に乗った影響だ。


 「あのメガネこっちだと機能しないからな、まぁあんな大がかりな設備がないと使用できないのは向こうの欠点だろうけど・・・。」

 「特注品と量産と並べちゃいけんよ、それ作るのに結構金がかかったんだろ?」

 「まぁね。」


 そんな話をしているとノックの音が鳴り一人の男性の声が入ってきた。


 「すみません、この席は空いていますか?」


 個室型の列車で本来ならば人数分の券しか販売していないはずだが、終着駅が近いこともあり適当に駅員が売ったのかもしれない。


 「嗚呼、一応二人分の席なら空いているよ。」

 レオンは軽く入室を許可した、するとそこには帽子にサングラスを付けミリタリースタイルの上着に青いジーパンに白い運動靴といった”日本の若者”の恰好をした青年だった。


 「君は、東京から来たのかい?」

 すると青年は驚いた顔で肯定する。


 「ええ、まぁ何でご存じで?」

 「僕たちもあの廃線の常連客なんですよ。」

 ロバートがいうとレオンは自慢するかのように携帯音楽プレイヤーをひらひらと見せ付ける。

 納得した彼は相槌を打ちながらベッドに座った。


 「昨日まで和歌山の廃線バスがつながっていたんですが、残念なことにそのバス停が撤去されたみたいなのでこっちから一旦遠回りするしかなかったんですよ。」

 「それはまた、焦りませんでしたか?」


 ちゃんとした公共機関ではなく得体の知れない物、鉄道会社に聞いたところで何も得ることはないだろうし、消えたときの絶望は想像をするだけでも恐ろしい。


 「一応路線図を大事にとっていたのでここへのルートを見つけましたが、もしなかったら今頃”前の世界”で迷っていたでしょうね。」

 「確かに。俺らも気を付けるよ。」


 そのようなことを話しているうちに汽車は止まり、終点に降りると隣にもう使われなくなった路線があった。

 「お客さん、そっちは廃線ですよ。」

 「大丈夫です。」

 

 しばらくホームで待つと灰色に塗られた無機質な汽車が蒸気の音を鳴らしながらホームに重いブレーキの音と共に停まった。

 「ふう~安心して帰れる。」

 「次は・・・星の国だそうです。」

 「まるで銀河鉄道だな・・・空を飛ばないだけで。」

 昔を懐かしむような顔をすると双子の弟が碧眼を反射させながら嗚呼、宮沢健二の作品ですかと言った。

 実際は宮沢健二のような文学的なものではなく某SFの作品だったのだがこのさいよかった。故郷へ、家に帰ったかのような錯覚を覚えながらその汽車にのると不思議な先客と車掌が何やらもめ事を起こしていた。


 「すみませんが、降りてもらいますタダ乗りを了承するほど甘くはありません。」

 「馬鹿野郎!こっちは命を懸けて逃げてこの列車に乗ったんだ!金なんて持つ暇なんざなかった!!」


 その旅人はレホルバー拳銃を持っており恰好は西部開拓者を思わせるカーボイハットをかぶっていた。

 「ですが規則です、この駅の先へ行きたいのでしたらここでお金を貯めてください。」

 「さっきの駅に降りれば金はいくらでもある!きんだってある!頼む一周するまで乗せてくれ!!」

 「すみませんが、この列車はさっきの場所にはおりません星の国で一旦降りてそこから乗り換えないと。」

 「その星の国は次の駅なんだろ!?何でだ!ただ乗り換えを了承するだけで乗車料金を払えるんだぞ!」

 「その人の分・・・建て替えるよ。」

 東京の青年は100円硬貨を二枚だし車掌に渡すと有り難うございますと言ってコツコツと革靴で木の板でできた床を叩き奥の方へと消えて行った。


 「すまねぇ。」

 「大丈夫ですよ、ここの列車そういう列車なので他にもバスとかあります。」

 後ろの方では双子の吸血鬼もやってきて彼と同じ席に座りそれぞれの自己紹介をする。

 まず双子の兄はレオン、そして弟はロバート。東京の青年は西郷さいごう最後にカーボイの男性はヨーゼフと名乗った。


 「しかしなんだこの列車は、廃線になったはずの駅にいきなり出てきたものだから驚いた。」

 「異世界への列車です、知らずに乗りましたか?」


 するとこくりと肯首するとロバートは路線図を出す、彼はそれを見るが普通の路線図ではないことだけは分かった。


 「それぞれの世界につながっています、また列車以外にもバスもあるそうですが・・・他にも異世界に行く方法はあるそうでして。」

 「ますます分らん、というか冗談にしか聞こえないんだが・・・」

 「それじゃあアンタの国にこれある?」


 レオンがMP3プレイヤーを取り出し彼に聞かせると彼は驚いた顔をした。

 「驚いた、レコードと比べ物にならないぐらい良い音質だ。」

 「次行くところはMP3とは違うけど音楽が聞く機械がありますよ。」

 いつの間にか戻ってきた車掌はヨーゼフの分の路面図を渡した。

 「あと一分ぐらいで発車します。」


 コツコツと音を鳴らして車両から消えていくと薄気味悪いなとヨーゼフはぼやいた。

 確かに気味が悪い列車かもしれないがもう少しオブラートに包めないのかと思うが、それを言っている間に汽車が動き出した。


 真っ暗の中に黒い煙を吐きながら電球の光を灯しながら走る列車、そしてその列車は行き止まりのはずのトンネルへと入っていく。

 内部では部屋の方が明るいせいで中の光景が鏡のように反射し、外の光景が辛うじてしか見えない状況にトンネルが止めを刺すと同時にガラスは鏡になった。

 そしてトンネルを抜けると外に星がキラキラと輝き、まるで藍色の水に白い砂をまき散らしたがが如く小さな光源が列車を包み込む。


 「おお・・・。」


 ガラス越しに見るのは勿体ないと思った西郷は窓を開けると自分たちが今線路の上にいないことに気付く。列車は天の川のような橋の上を走っていた、摩擦を起こしている車輪からには白くそしてキラキラと光る砂埃を立てながら駅らしき場所へと向かう。


 星々に紛れる空中に浮かぶ駅に停車した汽車はアナウンスだけを伝えるとモータといった物がないのに自動的にドアが開く。

 「それじゃあ、乗り換えの場所を探してみるよ。」

 「僕らは観光に。」

 「自分は東京行きに。」


 それぞれ別れを告げた旅人はぽつんと壁に備えてある扉を開くと地上へとつながっていた、一歩出ると一言では言い表せない程綺麗な場所でそして夜にも関わらず明るかった。

 「まるでクリスマスみたいだ。」

 

 どこかの外国風のクリスマス祭で描かれているような光景が今現実に広がっている、だからこの列車に乗るのを止められないのだ。例えこの前のように廃線が本当に廃線になるようなハプニングが起きても。


 「姉さん何か土産になりそうな物ってある?」

 「おや観光ですか?」


 立ち寄った屋台に駆け寄ると日本には絶対いない青色の髪が特徴の長髪の店員がココアを渡す。

 彼女は年相応に興外に興味を持っているのか西郷のことに関して問いだす。


 「まぁそんな感じかな。」

 「ところでどこの国ですか、変わった格好していますね。」

 「日本っていうところから。」

 「へぇ~聞いたことのない国ですね。」

 「そっか~何かゴーグルとか着けているいるから、色んな所へ行っているの?」

 「うん。結構楽しいよ。」

 「良いなあ、私も行きたい。」

 そこにTフォード車を青く塗ったような自動車が止まり、そこに白髪のひげが目立つ爺さんが降りた。

 爺さんは魔法使いのような恰好をしておりコーヒーを頼むと同時に小さな15cmほどの深さしかないカバンに腕を入れ物理法則を無視した現象を目の前で起きた。


 この光景を見て内心で驚く、無論別の世界で魔法使いが空を飛んだりする光景を見たことがあるので個人的にはその魔法が使えたらいいなと思っている。

 某猫型ロボットのような鞄から何かの本を取出し読書をする老人を凝視していたら彼は女性店員に知らないのと聞かれる。

 知らないけど欲しいと言うと結構高いわよと言われその願望が星屑のように崩れ去った。


 「旅人なら働くっていうのも一つの手よ?」

 「う~んそうだね、今は日本円しか持っていないし・・・あれ良く考えたらこの国のお金持ってない。」

 「・・・・うちで皿洗いから働く?」


 拳銃を隠しながら歩くヨーゼフは土埃で汚れた服でフラフラしながら彷徨っていた。

 どうやって資金を調達するのか最初は日雇いの仕事でもしようとしたが貧困層がいないのか全くそのような類がなかった。


 「クソ・・・となれば用心棒にでもなるか?」


 だが長居はしていられない、用心棒などをしている時間があるならば今すぐにでも強盗をした方が手っ取り早いが流石にそこまで根性は腐っていない。

 「射撃には自信があるが・・・おっ!お金見っけ!!」


 石畳に落ちている硬貨を見つけてゲットしようとした彼を見下ろす視線に気づくそして振り向いた先には。

 「何しているんですか、ヨーゼフさん。」

 さっき別れたはずの西郷がエプロン姿でウェイトレスをしていた。

 「それはこっちのセリフだ。」

 「西郷さん、お客さんですか?」

 「多分違う。」

 「ああ、違うさこの金は乗り換えのための金だ。」


 「10ポイン?それだけだと帰れないわよ。」

 「大丈夫だ、特殊な車両だし。」

 「今度は無断賃金で追い出されたりはしないね。」

 「ああ。もし次会ったら100円返すよ。」

 「元の世界・・・大丈夫なんですか?」

 「大丈夫だ、これでも農場を経営していたんだぞ。」

 「意外ですね、冒険だけしかしていないイメージがありました。」

 「冒険ってどこの少年向け小説だよ。」

 彼は笑いながら10ポイン硬貨をポケットに入れると簡単に談笑をする。


 「ホラホラ仕事をする、どうせ西郷もお金がないんでしょ?住み込みで働いてもらうわよ!」

 「オーケーオーケー。」


 彼は伝票を持ちながら店内へと消えるとヨーゼフは寂しく乗り換えの駅を探しに行った。


 歩き始めて一時間以上、町から離れ草原が広がる土地へ踏み入れるがそこでも星屑がおいており地面を照らしている。また上手なことに眩しすぎずにかつ暗すぎないようだ。

 空には飛行船とドラゴンと通過し、町の方へと向かっていく。

 あの飛行船には一体どんな客が入っているのかなと自分とは何の関係のないことを連想しながら地図を開いた。


 数日後。


 「いらっしゃいませ。」


 バイトの経験もあり店員として馴染みきった、傍から見れば数日真に入ったばかりの店員には見えない。

 「店で働いた経験あるの?」

 「コンビニのバイトのように訳の分らないポイントカードや配達とかないからね。」

 「何それ?」

 「とりあえず慣れっこってこと。無銭飲食は慣れていないけど。」

 「もうしたらダメよ。」

 「しない、しない。え~っとミュンヘン。」

 「ミュンよ。名前を間違えない。」

 「ミュン、この前ドラゴンが飛び回っていたけどあれはこの国では普通なの?」

 「普通じゃないわよ、あなたの国だとどうか知らないけどドラゴンが町に来るのは普通じゃないわね。」

 「ふ~ん、ドラゴンは何を思って来たのかな?」


 野外のテーブルを拭きながら素朴な疑問を投げかける、不意を突かれた彼女はそんなことを考えたことがないと言って西郷の目の付け所に素直な驚きを感じた。

 全くこの国に関して知識がないが故か、その疑問を持った。ここの常連客であるアヴァン博士が聞いたらそう言うかもしれない。


 「号外号外!美術館から空のダイヤモンドが盗まれたよ!!」

 「ん?少年マンガみたいな展開だな。」

 「嘘!?大事件じゃない!!」

 西郷の呑気な反応に対しミュンは驚愕さえも凌駕しかねない衝撃が襲った、そしてこの町の住民も同じ感想を持つ。


 「・・・怪盗ルパンみたいだな。ホームズか某探偵少年を連れてこればすぐに解決だな。」

 「何呑気なこと行っているのよ、私の家も気をつけなきゃ。」

 「美術館のようなところしか盗まないよ。」


 美術館では警察が集まり写真を撮るなどして現場証拠を納めてた。

 ここに集まる鑑識の物も訓練などでこのような場面に立ち寄ったことがあるが、実戦は今回が初めてだった。


 「少し浮き立っておるようですね。」

 「まあ、滅多にないことですので。」


 アヴァン博士は無残にも割られたガラスを見つめながら犯人の目的を考え出していた。


 「売り出すにしても、買い手がいないはず。」

 「となれば、コレクションにしていると考えた方が良いのかも。」


 果たしてそうだろうか、アヴァン博士は鑑識の考えを疑っていた。無論それは的をいているような気もするが何かと違和感を感じていた。


 「空のダイヤモンド。数百年前に空が割れた時に王宮に落ちてきたと伝えられておるが。」


 ただの言い伝えではなくしっかりと国の記録に残っている、その空が割れたとき様々な物が落ちてけが人が出たことはあったが幸い死者も出ずにカルトと言った興味の対象でにしかなかった。


 ただ、学界では真面目に取り組んでおりその空の裂け目の先には何があるのか取り組んでいた。

 例えば空のダイヤモンドのように空から岩や家が落ちてきて、思考と文化が根本から違う物としか思えない物がたくさんあった。

 蚕のマユのような家に不思議な化学反応を示す砂、そして乗り物のような不思議な何か。


 「・・・何にしても犯人はその線で進められるでしょう。」

 「でしょうね。」


 アヴァン博士はそのやり取りを見ながら外へと赴く。

 「異国の者にヒントでも貰いに行ってみようかの。」


・・・・


 「メイプルシロップかぁ、ここにもあるんだ。」

 「日本にもあったの?」

 「連いてきてくれませんか?協力を要請しに来ました。」

 「容疑者とかじゃなくてすか?」

 「ええ。」


 顔を見合わせるとミュンは了承した。

 その美術館はローマかギリシャのような神殿で、どちらかと言えば美術館と言うより観光地のような気がした。


 中には規制線が貼られておりマグネシウムで発行するタイプのフィルムカメラで現場を撮影していた。


 「何か随分と手際が良いですね。」

 「15分以内に終わらせた、天井から侵入し強化ガラスは釘と金槌を使って割ってそのまま下水道から逃げてしまった。」

 「本当にスパイ映画観たいだ。」


 西郷は盗まれた空のダイヤモンドの写真を見る、大きさは日本だとまずお目にかかれない大きさで大体人の頭ぐらいの大きさはあった。


 

(未完)

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