確定申告がゆく談判編(四百文字小説)
松子は能天気なフリーターである。
松子はアルバイト先のピザ屋から給料明細を受け取った。
「何これ?」
珍百景に登録できそうなくらい驚いた。
「給料から税金が引かれてるじゃないの!」
松子はメロスも裸足で逃げ出すくらい激怒した。
早速松子は税務署に乗り込んだ。
「どういう事よ、税金が引かれてるわ! 先月までは引かれていなかったのに酷いわ!」
松子は職員がチビりそうなくらいの勢いで捲くし立てた。
職員は松子が突き出した十二月分と一月分の明細を見比べた。
「時給が上がっているようです。そのためにお給料が増えて源泉所得税が課税されたのですよ」
「え?」
松子はハッとして明細を見比べた。
「雇い主の方にお話しされた方がいいですよ」
職員が笑いを噛み殺しながら言うと、
「わかってるわよ! あなた達がどれくらい真面目に仕事をしているのか、確かめただけよ」
本当は顔から火が出るくらい恥ずかしいのだが、松子は精一杯の虚勢を張って帰って行った。