08
仕方ないなぁ。
ココアは白いシャツからごそごそとカードを出すと、それを少女の前に突き出します。
『僕は、ココア』
黒く光るカードには、銀白の髪に白い肌、黒い目の幼い顔の写真が貼ってありました。
『ライブラ国女王立図書館特殊図書研究管理班収集係が正式な肩書きかな。戸籍上男。年齢は25。15歳前後に間違われて補導されることが多いのが最近の悩み』
ライブラ国の身分証明書は、図書カードを兼ねていました。
お笑い要素として自分の悩みも言ってみましたが、少女はさして興味は無いようです。
それよりも光るカードを眉をひそめて眺めてました。
『……ブラックカード……』
『うん、特殊図書っていうめんどくさいの扱ってるせいでね。僕のカードはこの色なんだ』
『ライブラ国全ての本を読める権限を持つカード』
あれ?この子詳しいな。
『そ。ただし、閲覧はできても貸し出し……つまり特殊図書の施設外の持ち出すことはできないよ。それができるカードを持っているのは館長と副館長くらいかな。金縁の模様がこのカードに刻まれているんだ。金の模様が刻まれているからクラウンカードって言われている』
もっと自分の方へカードを引き寄せようとした少女から、すっとカードを取り戻し、意地悪な顔をして聞きます。
『君は?』
ふくれっ面の少女は機嫌悪い顔のまま答えました。
『あたしはワイン・セラー国、ピヨーネ・ブラックパアル。10歳』
キッと鋭い目を向け、ココアの黒い目線に応戦します。
『美少女だから、言い寄る男が多くて大変なのが最近の悩み』
『それは結構なことで』
なかなか手ごわそうな子だ、ココアは目線を彼女に合わせたまま苦笑しました。