06
『あたり?』
聞いた途端、少女のイラついたような顔にココアはへラっと笑って確信します。
『僕は、ワイン・セラー国を特集した本を読んだことがあって、そこの国の人たちは年中ブドウ酒を作っていると読んだことがあるんだ。違う?』
指で猫を抱く手を指し彼は問い続けます。
『手や足でブドウの果汁を絞るのが何代も続く伝統なんだってね。だからこの色が体に強く出ているほど働き者だと認識されて、お嫁さんとして大人気だって。そのために入れ墨とか紫を強くする独特のボディメイクも発達しているって書いてあった』
黙っていた少女はよそを向き、小ばかにしたように鼻息を荒げました。
『……その本は、だいぶ時代遅れもいいところだわ』
通じた。
ココアは喜びを隠し、会話を続けます。
『そうなの?』
『ええ。だって、今は美白ブームで、どれだけ手足を白く見せるかがはやりなの。果汁絞りも機械化が進んでいるし、手足がきれいな子も多いわ。それなのにわざわざ紫に見せるなんて、ホント時代錯誤もいいところ。もし、今そんなことが流行っているとすれば、痴呆が進んでいるおばあちゃんの間だけね。もう誰もそんなことはしてはいないもの』
『えー。じゃあ、お嫁さん選びは?』
『男は美人が好きよ。要は顔の作りなのよ。決まっているでしょ?』
少女はかなり偉そうに。
先ほどの沈黙が嘘のように、ココアに向かって饒舌に話し始めたのでした。