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女王からの速達。
それも、一番重要課題に置いている最高閲覧禁止図書の回収及び調査を中断させてまで呼び出すなんてそれはかなりの重要事項に違いありません。
そして、女王の命令はいかなる場合も絶対です。
「……女王から一体何を?」
「さーあ?【早く帰ってこい、訳は後から直接話す】的な事しか書いてないのよ。でもまあ」
ラウは机から飛び降り、ココアを見下ろします。
そしてわしゃわしゃと髪の毛をかき回しました。
「お前なんか凄い頑張って大けがしたんだろ?女王も、手紙出したとき多分それで焦ってたんじゃね?優秀で貴重な特殊図書研究管理班の人員が一人欠けたらまずいってさ」
白い歯を見せ満面の笑みで笑います。
「あんま無理して周りに心配かけんじゃねーぞ。オラ!!」
はは、とココアの笑う顔がぎこちないのを、シンヤはどこか冷めた目で見つめていました。
「んじゃあ、この公僕めは女王様の元に媚びへつらいに行ってくらー」
手を大きく振り、彼は笑みを浮かべ事務所のドアに手をかけます。
「帰ったら、始末書と請求書を提出しろ」
室長の声に、彼は固まります。
ココアとシンヤは室長の方を向きます。
「--子供の機嫌を取ろうと、調子に乗って召喚魔法で犬出して暴走させて特製のガラスを破壊した」
なるほど、二人は理解し頷きます。
「有事と防衛目的以外での魔法の使用は禁止だ。わかっているよな?」
「……へい」
心なしかラウの背中が小さく見えます。
「なお、請求金額は六桁だ。確実に払えよ」
「げ、高っ」
「うわぁ……」
さらに無表情で追い打ちをかける室長に、二人は言葉を無くします。
「いってきや~す……」
消え入りそうな声で、彼は部屋から出て行ったのでした。