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『この髪が青い人、あたしの体をさっきのココアみたいに触ってきたの』
高らかに笑うラウに、ココアはため息をつきます。
「ラウさん。小さい子といえ、女の子に手を出しちゃダメです」
「スキンシップだ。高い高いをしただけ」
『こいつ、おっぱいさわった』
「ラウさん、犯罪です」
ココアはキッと睨みます。
「何を言ったか知らないが、うちの国でオレ様を裁けそうな人間で、落とせていないのはうちの国の女王くらいだ。下手に事を荒立てない方がいいぞ」
「幼女相手にまさかの口封じに動いた!?」
ココアはあまりのショックに口を押え目を見開きます。
「なんつー、ゲス発言」
シンヤは頭を抱えます。
同僚に絶望するココアとシンヤにピヨーネは目をぱちくりします。
『……ピヨーネ。この人は、女の人に良く好かれるんだ』
ピヨーネはまじまじと顔を見つめます。
彫の深い顔立ち、くっきりとした二重、深い青の瞳。
『この人は女性が大好きで、たくさんの彼女さんがいる。その中にはたくさん力を持っている人たちもいるんだ。国の軍隊や武器、法律を動かせるレベルでね』
身長も高くひょろりとしていますが、しまった体つき。
まるでモデルのようなたたずまいです。
『彼がやろうとすればちょっとした内戦を起こすことができる』
後ろで小さくひもでくくってまとめた青い髪は、ピヨーネの見たことがない髪色でした。
『悔しいけど、確かに説得力のあるイケメンだわ』
よくよく見るとピヨーネのツボだったのか彼女は顔を赤くして口を閉じます。
「オレ様の生まれ故郷はボディタッチが挨拶かつ愛情表現であり最大級の敬意なんだ。そう簡単に習慣は代えられん」
「この前はディープキスが挨拶だって言ってましたよ?」
『ちなみに、女王命令で【私の半径二メートル以内に近づくな】というお達しがでてる。一方でその実力を買われてたまに外交にも連れて行かれるんだ。あの人』
『……何のため?』
『君に教えるのはまだ早い気がするよ。とにかくあの人には近づかない方が身の為だよ』
ココアはぽんっと肩を叩きます。