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古びた本に、隙間だらけの本棚。
図書室としては閑散とした棚を抜け、やはり不似合いな分厚い扉にココアは手を駆けます。
「ココアさん、一つ相談があるんだけど」
「?」
「これ、ここの扉の所に飾りたいの」
と、クルミが見せたのは額縁に入った写真の記事でした。
それも、今朝問題になったばかりのココアのものです。
ココアはうえっと顔をひきつらせます。
「いや、それ飾らなくていいから!」
「だってすごく構図がかっこいいもの。この入口に飾りたいなって」
「最高閲覧禁止図書室を私物化しちゃだめだよ!!」
と、クルミの手にはすでに金槌と曲がった釘がありました。
「釘打ち込もうとしたら釘曲がっちゃったの。流石魔法仕掛けの鋼鉄の壁ね」
「国家機密の警備体制に穴開けようとしないで!!」
彼は顔を覆うと声を漏らします。
「……立てかけるタイプの額縁用意するからしばらく待ってて」
「はい」
「じゃあ、また来るね」
額縁を大事そうに握りすっかり元気な表情のクルミに、後ろ髪惹かれながらココアは重い扉を閉じます。
目を伏せる彼の横には、壁を背に腕を組み立つシンヤの姿がありました。