37
「あらあら、可愛い刺客さんね」
そこは本棚に囲まれた小さな部屋。
本棚の壁に囲まれ、机とベッドと小さなキッチンしかないそこは隙間を縫って作られたような窮屈感がありました。
窓一つない闇色の部屋をいくつかのろうそくの火が暖かく照らします。
「病み上がりなのに、おてんば刺客さんの監視役なんて大変ね」
栗色の髪を肩あたりでボブに切りそろえた彼女はくすくす笑います。
童顔のココアとそう変わらない年齢に見える彼女は、髪を掻き上げえくぼを作り、大きな目で話に聞き入ります。
「お蔭で髪の毛の色が真っ白になっちゃったよ」
注がれた紅茶に映るココアの顔はようやく緩みました。
最高閲覧禁止図書室。
最高閲覧禁止図書室管理者であるクルミは、その一角で住み本たちを見守っていました。
「あはは。それはオリガミの一件で染めたって聞いたわ。老人に変装したんですってね」
角砂糖を入れると、ココアの像は揺らぎます。
「そうなの?シンヤはペラペラとおしゃべりなんだから」
「また綺麗に白くしちゃったのね。染め過ぎると頭皮が死んでしまうわ」
「気を付ける」
クルミが焼いたクッキーを口にして満面の笑顔で答えます。
「クルミちゃんも髪型変えたんだ」
え?と彼女は目を丸くし、そして自分の肩を触ります。
「ええ。重かったからいい加減切ろうかなって。ココアさんたちが出ている間にちょっとイメージチェンジしたの」
「長いのも良かったけどその髪型もいいね」
「ありがとう」
と、呟いた彼女の目から涙があふれます。