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廊下と図書室を隔てる窓。
一斉にこちらを睨み付ける利用者の視線に、ココアはたじろぎ我を取り戻します。
仏頂面の少女の手の中には明るい紫色の猫が抱かれていました。
「……リンさん」
彼は視線を獣と合わさず指を指します。
「なあに?」
「図書室に、動物はダメです」
ぽけっと少し考え、彼女は大きく頷きました。
「そうだったわね。すっかり忘れてた!」
「あなたが女王室騎士隊長じゃなかったら、ここ出禁になるレベルですよ……」
彼女はのんびりと軽く答えます。
「じゃあ、次から気を付けるね」
……大丈夫なのかなぁ、うちの国の王室警備。
ほんわかと笑う彼女に、彼は国の危機を感じずにはいられませんでした。